BitLockerは、Windows 7 Ultimate/Enterpriseエディションで利用可能な暗号化システムである。内蔵しているハードディスクの内容を暗号化し、もし、PCが本体ごと盗難などにあった場合においても、データを読み取られる心配がなく、セキュリティ対策として効果的なものである。システムボリュームやデータボリュームなど、必要に応じて暗号化する。暗号化したボリュームを読み書きするためには、暗号化を行ったPCに搭載されたTPM(トラステッドプラットフォームモジュール)や、あらかじめ作成するUSBキーが必要になる。Windows Vistaから導入されたBitLockerであるが、ややもすると使いにくい部分もあった。

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具体的には、BitLockerを導入する場合、ハードディスクに別パーティションを準備する必要などがあった。つまり、使用中のPCでは、パーティションの操作といった作業が必要になる(少なくとも、標準的なツールでこのようなことはできない)。これは、Windows 7のインストールの際にパーティション構成が、BitLockerを利用可能になるように設定されている。もちろん、BitLockerを使用しなくても、問題はないようになっている。このように、パーティションの再設定を行う必要がなくなり、Windows 7では、BitLockerによる暗号化をドライブの右クリックメニューから開始できる(図1)。

図1 BitLockerの実行

また、リムーバブルメディアには「BitLocker to Go」という新らしい暗号システムが導入された。本稿では、これについて紹介しよう。

BitLocker to Goを試す

近年、大容量化と低価格化が進んでいるデバイスの1つにUSBメモリがある。数GBの容量を持ち、ドライバが不要であり、持ち運びにも便利である。しかし、便利な一方で、紛失しやすいのもUSBメモリの欠点といえよう。住所録や顧客データなどの重要データを保存した状態で、USBメモリごと紛失してしまうという危険性もある。また、2008年以来、USBメモリなどのリムーバブルメディアを感染経路としたウイルスなどもある。便利さもあるが、適切な対応が求められるのもUSBメモリといえよう。

Windows 7では、リムーバブルメディア用の暗号化システムとして、BitLocker to Goが実装された(もちろん、内蔵ハードディスクを暗号化する従来のBitLockerもあり、その設定が容易になったことは上述のとおりである)。BitLocker to GoはTPMやUSBキーなしでも利用可能な点もあり、簡単に利用ができる。さらに、BitLocker to Goで暗号化したリムーバブルメディア内のデータには、暗号化時に指定したパスワード、もしくはスマートカード認証と個人識別番号で認証を行う。では、早速、USBメモリにBitLocker to Goを使い暗号化してみる。暗号化前の状態は、図2、3の通りである

図2 USBメモリのプロパティ

図3 USBメモリの中身

図1同様、右クリックで[BitLockerを有効にする]を選択する(図4)

図4 右クリックで、[BitLockerを有効にする]を選択

暗号化が開始される(図5)。

図5 暗号化の開始

まずは、ロック解除の方法を選択する。ここではパスワードを使用することにした(図6)。

図6 ロック解除の方法

ついで、回復キーの保存や印刷を行う。万が一、パスワードを忘れてしまった場合の対策である(図7)。

図7 回復キーの保存・印刷

実際に、ファイルへの保存は図8のようになる。

図8 回復キーのファイルへ保存

以上で、準備が完了する。[暗号化の開始]をクリックすると、暗号化が行われる(図9)。

図9 暗号化の準備完了

実際に、暗号化が始まるが(図10)、USBメモリの容量などによっては、時間がかかる。

図10 暗号化中

暗号化が完了すると、図11が表示される。

図11 暗号化の完了

暗号化されたUSBメモリを再度、PCに接続すると、図12のようにカギがついて表示される(図12)。

図12 カギがついて表示されるUSBメモリ

アイコンをダブルクリックすると、パスワードが求められる(図13)。

図13 パスワードの入力

パスワードが正しく入力されると、アイコンのカギが外れた状態となる(図14)。

図14 カギが外れた状態

他のPCで利用するにはBitLocker to Goリーダーを使う

さて、暗号化されたUSBメモリを他のPC、しかもBitLocker to GoがサポートされていないWindows XPなどで利用するにはどうしたらよいのだろうか?実は、BitLocker to Goリーダーという仕組みが用意されている。パスワードを正しく入力することで、データの読み出しだけは可能になる。Windows XPのPCに接続した状態が、図15である。

図15 暗号化したUSBメモリをWindows XPに接続

Windows 7同様、アイコンにカギがついて表示される。中を表示させると、BitLocker to Goリーダーが見える(図16)。自動実行機能を有効にしていると、BitLocker to Goリーダーが起動する。

図16 BitLocker to Goリーダー

このアイコンをダブルクリックすると、パスワードの入力が求められる(図17)。

図17 パスワードの入力

正しくパスワードを入力すると、図18のようにUSBメモリの内容が読み出せるようになる。

図18 USBメモリの内容を表示

さて、ここで、USBメモリのプロパティを表示してみた(図19)。

図19 暗号化されたUSBメモリのプロパティ

空き領域がまったく残っていない。これは、USBメモリ経由で感染するウイルスなどの混入を防ぐためと思われる。このように、暗号化とともに、セキュリティ的にも安全な状態となっている。Windows 7ユーザーならば、USBメモリなどにはぜひBitLocker to Goを設定しておきたい。