「ジオパーク」をご存知だろうか? 「ジオ」とは、大地や地球のこと。大地の公園、地球の公園といった意味だが、まだ一般的にはなじみがない言葉かもしれない。それもそのはず、日本にジオパークが誕生したのは、つい最近のことなのだ。しかし、今後ジオパークは次々と日本各地につくられる予定。いったいジオパークとはどのような場所なのか? 日本ジオパーク委員会事務局の渡辺真人(まひと)さんに話をうかがった。
ふだんは見過ごしてしまう「大地」のおもしろさ
モザイクのようにとても細かく色分けされた日本地図を見せてもらった。地質図というものだ。「例えば、四国の北部から紀伊半島へと続く緑がかった地質。この土地ではミカンが栽培されているんです。この地質、東は静岡にも見られます。そして、九州の長崎にも」。渡辺さんの話に、思わず「なるほど」とつぶやいた。いずれもミカンの産地だ。「もちろん、その他の理由も考えられますが」と言いつつも、渡辺さんは地質というもののおもしろさを話してくれた。
日頃から、地質や地形を意識して風景や大地を眺めている人は、ほとんどいないだろう。しかし、大地の地質や地形は、地球の歴史を物語っているだけでなく、すばらしい風景として人の目を楽しませ、さらに人の暮らしに直接結びついている。この大地や地球の営みをひとつの遺産として学び、楽しんでもらうために始められたのが「ジオパーク」というわけだ。
世界遺産との違いは「活用」
ところで、ジオパークの話を聞いて「世界遺産とどこが違うのか?」と思った人もいるに違いない。簡単に言えば、世界遺産の場合、遺産の保護が目的であるのに対し、ジオパークでは保護と同時に活用も重視される。
「その地域にある大地の遺産を中心とした貴重な自然や文化遺産が保護され、地元の人がその価値を理解して旅行者に魅力を伝えます。旅行者はそこに滞在して地球の成り立ちや仕組みを楽しみながら学びます。そして、旅行者によって地域の経済は活性化するわけです」。渡辺さんはそう説明する。
ただジオパークという「場所」があるだけではなく、そこで教育やガイドツアーなどの活動をすることによりジオパークを活用し、地域経済を活性化していくことが、ジオパークの大きな目的となっている。およそ4年ごとに見直され、活用が不十分な場合はジオパークの看板を返上しなければならないというのも、世界遺産とは大きく異なる仕組みだ。