海外で実績を持つデルにとって、グローバル連携は大きな強みとなる。スーパーコンピュータの性能をランキングする「Top 500 Supercomputers」においても、デルのHPCクラスタが多く登場しており、これが海外での高い実績を裏付ける。
「研究機関のなかには、海外研究機関との横のつながりを強くもっている組織も多く、海外で採用されたデルのHPCソリューションを国内でも使用することにより、より効率的なコンピューティング環境を構築することができます。海外におけるデルのHPCソリューション導入の実績やノウハウを活かして、日本国内の顧客へ最適なアドバイスを行うことが可能なのです」(郡氏)。
デルは2009年2月から、4つのグローバルビジネスユニット体制へと組織を再編した。大手企業を中心とした「ラージエンタープライズ」、新興国市場を主要ターゲットに含む「中小企業」、先頃、エイリアンウェアの世界展開に本格的に踏み出した「コンシューマ」、そして、最後に「公共」である。
公共事業に関しては、「小中、高校向け教育分野」、大学・研究所などの「高等教育分野」、「医療分野(ヘルスケア、ライフサイエンス)」、「政府・官公庁・自治体分野」の4つが主要領域と位置づけられ、HPC事業はこれらの分野に対して、横断的に提案していくことになる。
「公共分野を管轄する組織をグローバル体制で持つことで、世界規模で情報の共有化が促進されています。海外における最適なHPCのソリューション提案に関する情報が数多く入手できるようになっただけでなく、米本社のHPCラボの活用についても、これまでは詳細な手続きが必要だったものが簡素化され、日本からの利用頻度が増加しています」(郡氏)。
素粒子の研究を行っているスイスのCERNのアトラスプロジェクトには、全世界で262の研究機関が参加しているが、以前のデルの組織では、地域ごとの組織となっていたため、これを横断的に統括するには、CEOレベルにまで上っていかなくはならなかった。だが、グローバル組織体制となったことで、公共事業を統括する組織ではワールドワイドでユーザーを支援することができるようになったのだ。
「地域ごとの組織では、米国本社に情報提供を求めても、米国の顧客が優先され、日本からの要求は優先順位が低い傾向にありましたが、グローバル組織では、同じチームとして国をまたいだ連携が可能になったため、顧客にとっても大きなメリットにつながっています」(郡氏)。
今後は、グローバル組織体制のなかで、大学、研究所、独立行政法人といった主要ユーザー領域ごとに専門化した組織を日本市場向けに確立する考えで、ユーザーとより緊密な体制が敷かれることになる。
「HPC分野は、デルが掲げる『ITのシンプル化』が当てはまる分野です。デルが標準技術によって提案するクラスタ型のHPCは、拡張性、柔軟性のほか、他の研究所との連動性という点でも効果があります。また、これまでは、クラスタ型でできる範囲、スーパーコンピュータでできる範囲が分かれていましたが、CPUの向上、サーバ性能の向上によって、クラスタ型でもスパコンに近い性能が出るようになりました。デルは、コスト面からも、運用面からも強みを発揮できるのです」(郡氏)。
郡氏は「今後はHPC分野でもITのシンプル化を進展させていきたい」と、HPC分野において、デルが起こすイノベーションに強い意志を見せた。