デルは、1999年からHPC分野に本格参入しており、最新のテクノロジーの搭載や、高いコストパフォーマンスによって、この分野をリードしてきた。
郡氏も「HPCに関する基本的な知識だけを有する小規模ユーザーから、複雑で大規模なHPC環境を必要とする大規模顧客まで、あらゆる規模の顧客の多様なニーズに対応した最適なHPCソリューションを提供してきました。研究投資予算の効果的な配分にも大きく寄与しています」と語る。
日本においても、名古屋大学、大阪府立大学、国立遺伝学研究所、高エネルギー加速器研究機構、同志社大学、東京大学素粒子物理国際研究センターなど、顧客の組織規模に応じた数々のHPCソリューションを提供している。なかには2000ノードという、大規模なHPCシステムの国内導入実績もある。
ノード数の多いHPC分野では、省電力にも高い関心が寄せられるが、今年の8月、デルは米国環境保護庁(EPA)の定めるサーバ製品の省電力化プログラム「Energy Star for Computer Servers 1.0」への対応を発表した。対応するのは、「PowerEdge R610」と「PowerEdge R710」で、これらは、これまで培ってきたエナジースマート技術をさらに進化させることにより達成し、電源モジュールのAC/DC変換効率 最大92%、内蔵ファンの消費電力を60%削減のほか、筐体内ケーブリングの削減、センサーによるファン動作の自動制御などにより実現されている。
同社が行ったブレードサーバにおける検証では、他社同等製品と比べ、約1-2割の省電力性能を持つという。
また、運用面ではフレックスアドレス機能により、コスト削減を実現している。これは、特許出願中の機能で、SDカードにMACアドレスのほか、ファイバ・チャネル・スイッチやHBAといった機器に固定的に割り当てられるアドレスであるWWNを持ち、シャーシのスロットに固定的に割り当てることができる。そのため、予備ブレード交換時にネットワークやスイッチ側の保守作業が不要となるほか、SANやLANに影響を与えることもないのだ。
「経済環境が悪化するなかで、研究投資予算の削減などの動きも顕在化しています。ですが、必要な分野に対する投資は維持したいという考え方もあります。そんななか、低コストで導入できるデルのHPCシステムへの注目は日増しに高まっています。こういう時期だから、むしろデルにはチャンスなのです」(郡氏)。
「デルモデル」と呼ばれる独自のサプライチェーンや、独自の生産体制、米本社に設置しているHPCラボで培った省電力化技術の採用や、パフォーマンスを最適化するためのチューニング対応など、デルならでの仕組みがそれを下支えしているといえる。
また、ブレードなどを事前に組み込み、検証を終えた形で納入し、現場ですぐに稼働できる仕組みを採用しているのもデルの特徴だ。他社が現場でブレードを差し込み、数々のパーツを組み込んでケーブリングするのに比べると、その容易性は明らかだ。構成にもよるが、通常約2-3週間で納入が可能だという。
また、PowerEdge R710はブートからセットアップまでにかかる時間がわずか6分ほどだといい、組み込みフラッシュメモリによるサーバ セットアップ時間の短縮も図られている。
「稼働までのリードタイムは圧倒的にデルが早く、数週間というリードタイムではなく、数日間でのスムーズな導入が可能」(郡氏)というわけだ。
また、部品ごとに梱包された箱が、ユーザー現場に山積みにならないという点では、昨今のエコ意識の高まりにも合致したものだといえよう。
さらに、システムインテグレータをはじめとするパートナーとの協業により、顧客にとって最適なHPC環境を実現できる点も見逃せない。
現在、日本においては、約20社のシステムコンポーネントパートナーがHPC分野で協業している。そのなかには、グローバルプレーヤーとの連携も少なくない。
「デルの日本法人と協業しているパートナーの日本法人同士が、それぞれの本社に対して要求をあげていくということもあります。当社が持っていない技術やノウハウを他社との連携でカバーすることが可能で、各社が持つノウハウとの連携が信頼性の高いデルのHPCシステムの構築に寄与することになります」(郡氏)。
デル・コンサルティング・サービスを通じたHPCに関する提案や、特定用途に最適化したカスタムビルドを公共分野に対して行っていくという動きもこれから出てくることになりそうだ。