さまざまな便利さ、お得感のある「せんたく便」。だが、ふつうは店で洗濯物を預けるのに対し、宅配便で送るだけということに対しては、多少の不安を感じているという人もまだ少なくはない。そんな心配を一掃するには、「現場」を目で確かめるのが一番だ。前回に引き続いて今回は、いよいよヨシハラクリーニングの工場をご紹介しよう。

一般の店舗より神経を使う洗濯物チェック

まだまだサービスが始まったばかりとも言える「せんたく便」に対して、不安を抱く人がいるのは「よく理解できる」と吉原社長も頷く。もちろん、同社では熟練の職人による仕上げが施され、電話やメールでのアフターフォローもしっかりと行っている。「認知度が高まり、利用するお客様が増えれば自然と解消されるものと思っています」。

「せんたく便」は工場に洗濯物が届いたところから、厳しいチェックが始まる。一般的な店舗サービスと異なるのは、箱の中の洗濯物の点数を確認すること。既報の通り、例えば「10パック」利用の場合は10点までは規定のパック料金が適用されるが、それ以上になった場合は、1点超過につき一律525円の追加料金が発生する。

「せんたく便」で届いた洗濯物は、念入りにチェックされる

また、この点数の数え方についての問い合わせもしばしばある。「取り外し可能なコートのフードはどのような扱いになるのか」などの疑問があれば、事前に電話やメールで確認しておいたほうが無難だろう。

洗濯物の点数の確認を終えると、洗濯物そのもののほころびやシミのチェックや、ポケットの中に物が入っていないかなどを細かく丁寧に見ていく。店舗の対面方式では、何かあればお客にその場で確かめることも可能だが、「せんたく便」ではそういうわけにはいかないため、より注意深さが求められるわけだ。

なお、出す側の利用者はドライ品、ランドリー品を区別することなく箱に入れても問題はないし、色物と白物を一緒に入れても大丈夫だ。(ただし、どちらかが濡れていると色移りしてしまう可能性があるので、どうしても入れる際にはビニール袋などに入れるよう気をつけたい)

ポケットなどに入っていたものは、取り出し保管しておく

シミ抜きの機械。ドライクリーニングの前にシミ抜き作業は行われる

品質の確かさが「顔の見えない不安」を解消

クリーニング工場は広さおよそ300坪。そこで行われている作業は、基本的にほかのクリーニング工場と同じだ。ここの工場では、ドライクリーニングが95%を占めている。水洗いされるのはYシャツなどだ。

大半の洗濯物はドライクリーニングで汚れが落とされる

チェックが済んだ洗濯物は「洗濯便」以外の洗濯物と同様な作業工程を経ていく。シミのあるものは最新の機械を使い、念入りにシミ抜きが行われる。シミの種類などによって利用する道具やシミ抜き剤が異なり、職人の技が必要とされる。

ドライクリーニングを終えた洗濯物は、熟練した職人さんたちによって仕上げが行われていく。ズボン類はプレスの機械を使うが、折り目が正しくなるように細心の注意が払われる。機械では仕上げられない股上部分などは、手作業でしっかりとアイロンがかけられる。細やかで丁寧な作業だが、手際よく進められていく様子は見ていて気持ちがいいほどだ。

背広などは別工程になっていて、蒸気が全体に当てられ、蒸らしシワをのばした後に、こちらも手作業でアイロンがかけられていく。おろしたてのような上着が次々と仕上げられていく工程は、手仕事の確かさ、熟練の技に裏打ちされた流れ作業とも言えるだろうか。

スピーディーかつ丁寧な作業は、Yシャツの場合ももちろん同じこと。業界では早くから機械化が進められてきたという。襟、袖のプレス機械、腕の部分、そして全体的なプレス機械、どれもおもしろく思えるほど見事なものに感じられた。淡々とセッティングしていく職人さんの姿も印象的だった。

ズボンプレスを使うものの、手作業も不可欠。繊細かつ素早い作業が行われる

ポケットなどに入っていたものは、取り出し保管しておく

工場の中には吊り下げられた洗濯物がゆっくりと巡っている。工程の最後には機械によってビニールの袋に入れられていく

Yシャツにはいくつかの機械が使われて、シワがのばされていく。襟、袖のシワをのぞいた後に、全体のシワをのぞく機械にかけられる

これらの作業工程は、クリーニング業界では一般的なものだろう。よく考えてみれば、普段利用しているクリーニング店の工場を見たことはないし、このような場所を訪ねたのは今回が初めてのことである。どのような作業が行われているのか、自分の目で確かめることができたのは、一人の利用者としても安心に結びついた。何よりも滋賀県で50年の歴史を誇る老舗であるヨシハラクリーニング。その品質の確かさは、宅配便でやり取りすることの不安を取り除いてくれる大きな要因となるだろう。

そして、仕上げられた洗濯物は、専用バッグやリピート注文の依頼書などが同封され、再びヤマト宅配便によって返送される。荷物が工場に到着してから3日後には返送することになっているので、宅配便による送付・受け取りでありながら、近くの店舗より引き取りに時間がかかるという印象はまったくない。これも「せんたく便」の魅力のひとつとなっている。

こちらはカーテン。取り扱っているのは衣服だけではないので、さまざまな利用方法が考えられる

自社でシステム開発し、IT管理を一元化

前回に記したとおり、吉原社長はIT業界経験者であり、「せんたく便」を始めるにあたっても、当然のことながら最初からITシステムを導入した。集荷の処理、個人のデータ管理など、すべて一元化されていて、「せんたく便」の運営をスムーズに実現している。

現在までのところ、「せんたく便」の申し込みは、電話とサイトではそれぞれ半分ずつ。だが、サイトからの申し込みは少しずつ増加傾向にある。メールによる問い合わせも増えてきているという。

集荷の状況についても、即日集荷のオーダー(14時までの注文の場合、18時以降の即日集荷に対応。詳細は注文画面を参照)なども表示されたり、利用者の住んでいる場所が地図上に表示されるなど、すべてが一目瞭然で使いやすいのがよくわかる。このあたりはさすがに業界出身者の実力が充分に発揮されている。

今後の吉原社長の目標は、新工場の建設によるサービス内容のさらなる充実化。冬物を長期間預かる設備などを視野に入れているという。

より認知度を高めていくことを目指しつつも、すでに「せんたく便」は首都圏を中心として、着実に広まりを見せている。新工場の建設が「せんたく便」のサービスをどのように展開させていくのか楽しみだ。