2010年10月、羽田空港の新しい管制塔、4本目の新D滑走路、そして国際線ターミナルビルの供用が始まる。新滑走路が完成すれば、今より年間約10万回の発着枠が増え、羽田からより多くの国へ行けるようになる。羽田空港が新しく生まれ変わるまでの一年間、再拡張工事や新規乗り入れ航空会社など最新のレポートをお届けする。
日本に"国際標準"の空港誕生
羽田空港に4本目のD滑走路が建設されている。
4本の滑走路を持つ空港といえば、アメリカのニューヨーク(JFK)やサンフランシスコ、パリ(シャルル・ド・ゴール)といった世界でも有数の国際空港と肩を並べる規模であり、いよいよ日本にも"国際標準"の空港が誕生することになる。成田と関空は現在2本の滑走路で運用され、最終的に建設されたとしても3本までの予定だから、日本でも最も滑走路の多い空港となるわけである。
さて、その新しい滑走路の建設現場を歩いてみた。D滑走路は、現空港と620メートルの連絡誘導路で結ばれ、沖合いに展開する。誘導路を歩いていくと、滑走路の側面とT字にぶつかる形になるが、滑走路は片方が埋立部に、もう片方が桟橋部になっているのが見て取れる。こういうジョイント構造の滑走路は今まで見たことがなかったが、それもそのはず、世界初の試み。ハイブリッド工法の滑走路なのである。
川の流れを妨げず、生物が棲みやすく
ジャケット構造の桟橋部を持つ空港というのも珍しい。筆者は取材の帰りに桟橋部の下を船で通ったが、それも桟橋構造ゆえできること。滑走路の下をくぐるという体験はなかなかできない。
桟橋構造を採用したのは、D滑走路が多摩川の河口に位置するので、その川の流れを堰き止めないため。工事用資材を海から運んでいるのは24時間365日の施行ゆえに騒音が出ないようにする必要があるから。さらに、埋立部の護岸には石積みをして、できるだけ海の生物が棲みやすくしている。
製造や建設の段階からエコや環境に配慮するのは今や社会のスタンダードになりつつあるが、国を挙げての事業ともなれば当然かもしれない。
滑走路島の長さは3,120メートルで、そのうちの1,100メートルが桟橋部、残り2,020メートルが埋立部。地盤の緩い沿岸部にある滑走路のため、高い耐力を保つために鋼管(杭)を地盤の安定する深さまで打ち込んで、沈下を防ぐ手法を取っている。開港後、急激とも言える地盤沈下で予想外の予算が必要になった関空の教訓も活かされているようだ。
「100年もつ滑走路を造れ」
埋立部と桟橋部のジョイント部分には、地震の震動による変位を吸収する伸縮装置を設置するなど自然災害にも対応。「100年もつ滑走路を造れというミッションを(国土交通省から)受けているんですよ」とある関係者は漏らしたが、数千億円という多額の費用が投入されているのだから、少しでも質の良い滑走路を造ってほしいものだ。
新滑走路に先駆けて、2010年1月からは新しい管制塔の供用が始まる。高さ77.1メートルの現管制塔では新滑走路が見えにくいため、115.7メートルの国内で最も高い管制塔となっている。
新滑走路の供用が始まれば発着能力が年間約30万回から約41万回に大幅に増える。羽田発着の国内線は豊富にあるが、国際線は現在、中国(北京・上海・香港)、韓国(ソウル)便のみ。それが、今回の発着枠増加で何カ国になるか。羽田空港は、正式名称を「東京国際空港」と言う。その国際空港の名に合った豊富な国際線の就航に期待したい。