アーティストとして生きる道へ

――今の表現の中心はアートになっていますが、音楽から移行されたのはなぜなのでしょう。

「わからないな(苦笑)。でも、エドワード・ホッパーから影響を受けて作ったソロアルバム(『Marshall's House』2004年)での経験は、影響の一つだったかもしれません。当時はあまり気乗りしなかったのだけど、マネージャーから薦められてプロモーションのためにアート作品を使ったんです。そしたら、結果的にうまく行ってね。そのことが、自分の興味をアートに移したことと関係している気がします。実は、展覧会も最初は開くつもりはありませんでした。でも、こうした作品を発表することで、人々とのコミュニケーションを取れるのではないかと考え、やることにしたんです」

「towpath」2009/(c)John Squire

「motto」2009/(c)John Squire

――ザ・ストーン・ローゼズのジャケット作品を制作されていましたよね。ファンにとって、あの作品はバンドを思い起こさせる、ある種のアイコンともなっています。自分の作品が、そのような存在になっていることをどう思われますか?

「自分にとっては昔のレコードですから不思議な感覚ですね。昔のアルバムのジャケットとしてファンが覚えているという現象は、イギリスでも同じようにあります。でも、昔と今は時代も違いますし、その作品は現在制作している作品とは別次元にあります。比較するならば、当時の作品は子どもが色鉛筆やクレヨンで描いたようなものですから。ただ、そういったイメージが音楽とともに残ったり、音楽がイメージを引き寄せたりする、という気持ちはわかりますけどね」

――今回の来日は、次回の作品制作において何か活かせそうですか?

「道路のインフォメーションサインや広告を写真にたくさん撮っているので、作品に使えるかもしれないですね。一緒に仕事をする予定のリバティプリント社(ファブリック等を扱うロンドンの老舗メーカー)の人々と紅葉を見に行くので、それもアイデアになりそうです」

「plain view」2009/(c)John Squire

「hummingbird」2009/(c)John Squire

――日本のファンに一言お願いします。

「過去に生きようとするよりも、成長しながら前に進んでいくことが、人生には重要だと思っています。今後も画家として歩み、作品を作っていけたらと考えているので、どうぞよろしくお願いします」

日本のファンにも「アーティストとして新たな道を歩む自分の表現を、アート作品から感じてほしい」と語るジョン・スクワイア氏。終始、丁寧に回答する彼の言葉には、穏やかながらも強い思いが込められているかのようだった。日本で初めての開催となる、ジョン・スクワイア氏の個展。ザ・ストーン・ローゼズ時代からの音楽ファンのみならず、コンテンポラリーアートファンにも新たな刺激を与えることだろう。

ジョン・スクワイア展覧会「ネガティブ・アフターイメージ」

会場 TOKYO HIPSTERS CLUB 2F フリースペース
会期 開催中、12月9日(日)まで
会場 12時から20時
入場料 無料
問い合わせ 03-5778-2081