PDC2日目。今日の基調講演は、Windows 7の開発を指揮したスティーブン・シノフスキー氏。会場では、いきなり「ウルトラ7」の主題歌が流れた。日本人には大受けだったが、米国を含め、他国のメディアには、わからなかったようで、隣に座っていたアメリカ人に「日本の曲なの?」と聞かれてしまった。
Windows 7の発売直後ということもあり、3年も先のことになる次期Windowsについての話はなかった。まず、シノフスキーは、Windows 7の開発を振り返った。
Windows 7の開発過程では、β版などに組み込まれたWindows Error Reportingなどが非常に有効だったとした。エラーが発生したとき、以前は、Dr.Watsonというプログラムが起動、エラー状況を表示したりファイルにセーブすることが可能だった。しかし、これは、開発者自身に役立っても、ユーザーには何の意味もない。また、エラーを報告するために、ファイルなどをユーザー自らがメールなどで送信する必要があった。
これに対してWindows Error Reporting(WER)は、クラッシュなどのエラーを受けて、詳細な情報をマイクロソフトにレポートする。その課程でさまざまな情報が収集されたという。
エラーレポートなどで収集されたさまざまな統計。9万以上のデバイス、1万4000以上のプリンタが報告され、アプリケーションは88万種類以上。Windows Error Reportは、10万以上に上った |
そして、シノフスキー氏が紹介したのが、次期ブラウザとなるInternet Explorer 9だ。もっとも大きなシェアを持つIEだが、他のブラウザと比べると、CSSなどのレイアウト機能やJavaScriptの実行速度といった点で遅れを取っている。現状、多くのサイトがIEを基準にページを作っているため、CSSの問題などを感じることは少ないが、インタラクティブ性の高い、AJAXサイトなどでは、もたつきを感じることがある。これに対して、FirefoxやChromeは、高速なJavaScript実行速度を持ち、CSSへの対応も進んでいる。
IE9では、こうした点に対応するようだ。というよりも、FireFoxやChromeを明確なターゲットとして、これに追いつくためにも強化が必要なのであろう。
たとえば、Web Standards ProjectのAcid 3テスト(標準への準拠の程度をテストするもの)では、FirefoxやChromeが90~100点程度の値を出すのに対して、現状のIE8では、エラーが発生し、20点程度しか得点できない。IE9は、現在開発中だが、基調講演の時点で、32点まで上がっているという。また、Webkit.orgのSunSpiderパフォーマンステストでは、IE8は、FireFoxなどに5倍程度の差が付いていたのだが、これが2倍以下に縮まっているという。
SunSpider(Webkit.org)によるJavaScirptの実行テスト。IE8は、FireFox 3.5に5倍程度の差をつけられている。これに対してIE9では,FireFox 3.6に近い値を出している |
また、描画方法なども変更になり、GDI経由からDirect2D経由となるようだ。このため、表示が高速化されるとともに、文字の表示品質も上がるという。たとえば、Bing Maps(かつてのWindows Live Maps)の地図スクロールもスムースになる。Direct2Dは、Windows 7で導入された技術で、Direct3Dの上で動作する2次元グラフィックス用のAPIだ。GDIなどに比べて、アンチエイリアスなどが強化されており、高速で高品位なグラフィックスを可能にする。
βの配布などはまだのようだが、このところ、機能追加はあったものの、強化されていなかったIEが戦線復帰することで、また「ブラウザ戦争」が始まりそうだ。
最後にシノフスキー氏は、開発者に対して、アプリケーションのWindows 7の新しいAPIへの対応や、Windows 7デスクトップへの統合、64bitへの対応などを呼びかけ、基調講演を締めくくった。