皆さんはフィンランドという国に、どのようなイメージを持っているだろうか。まずは「北欧」や「サンタクロース」というキーワードが浮かび、漠然と美しい雪国をイメージする方が多いかもしれない。ご存知の方もいらっしゃるだろうが、テレビアニメで好評を博した「ムーミン」の生まれ故郷であり、数多のF1・WRCドライバーを育んできた世界的なモータースポーツ大国。またIT先進国としての側面も持ち合わせており、世界有数のモバイル端末メーカーであるノキア生誕の地でもある。最近では「フィンランドメソッド」といった独自の教育システムが注目を浴びた文化レベルの高い国。それがフィンランドだ。
空に幻想的に輝くオーロラを観測できるのもフィンランドならでは。冬季のみに現れると思われているが、実は一年中発生する現象なのだ |
そのフィンランドで生まれたセキュリティ対策ソフト「エフセキュア インターネット セキュリティ 2010」については、既報にて、類い稀なるスキャンスピードの速さや、クラウド技術を用いた次世代のセキュリティシステムを搭載していることをお伝えしてきた。本稿では、10月に開催された「エフセキュア パートナーカンファレンス 2009」での講演で来日したエフセキュア・コーポレーション、コーポレートビジネスVice Presidentのマリア・ノルドゲンさんに、「エフセキュア インターネット セキュリティ 2010」の特徴や、エフセキュアならではのノウハウ、そして今後のインターネットセキュリティへの展望を伺った。
"軽量さと軽快性"それが「エフセキュア インターネット セキュリティ 2010」を表すキーワード
まずはマリアさんに「エフセキュア インターネット セキュリティ 2010」の最大の魅力をズバリお聞きした。「今回の製品では、スキャンスピードの速さとプログラムが起動している際のメモリ使用量の大幅な低減を実現しました。"軽量であり、軽快であること"、これが一番の魅力だと言えます」とのこと。昨今の、特に今年度に登場したセキュリティ対策ソフトの多くが「軽快」や「快適」を標榜している。
そこで、ふと思い浮かんだ疑問を素直にぶつけてみた。「日本市場においてセキュリティ対策ソフトの導入を考えているユーザーはそういった言葉に辟易している側面もある。その中からエフセキュア製品を選ぶ決め手となるのは何だとお考えなのか?」と。すると穏やかな笑顔を浮かべながら、マリアさんはこう答えてくれた。「軽量且つ軽快であることの恩恵、そこが一番のユニークなポイントかもしれません。最新のCPU、大量のメモリを使用する必要なく、どんな環境のPCでも動かせる。
「エフセキュア インターネット セキュリティ 2010」が起動していることを忘れてしまう。その存在を感じさせずに、大切な家族との写真や家族旅行のビデオなどのかけがえのないデータが保存されたPCをあらゆる脅威から守ることができるのです」。エフセキュアが日本法人を設立してから10年。昨年、日本エフ・セキュアからエフセキュアへと社名を変更。そして、2009年9月にはブランドロゴを刷新するとともに、新たに「かけがえのないものを守る」というスローガンを掲げた。
それらの信念に基づいて開発され、自信を持って世に送り出したという意気込みを感じさせてくれる言葉だ。さらにマリアさんは軽量・軽快の秘密の一端を明かしてくれた。「他社でもクラウドを用いてセキュリティサービスを展開していますが、我々は必要な時に必要なプログラムをメモリにロードさせるエンジンを採用しています。ですので、CPUに掛ける負担も最低限に抑えることができますし、メモリに関しても同様でコンパクトかつ軽快に動作させることができるのです」。
実際に筆者もエフセキュアWebサイト上から無料評価版をダウンロードしてWindows 7にインストールしてみた。職業柄、様々なセキュリティ対策ソフトを導入してきたが、ここまで存在を感じさせないソフトは珍しい。また、面白いと思った機能が、日々更新されるパッチや修正プログラムの有無を自動でチェックしてくれる「エフセキュア ヘルスチェック」だ。「エフセキュア インターネット セキュリティ 2010」本来の機能ではないものの、インターネットセキュリティをより強固なものにするためには、更新プログラムをダウンロードしてつねに最新の状態にしておくことが肝要だ。そういった側面をさらりとサポートするあたりがユーザーフレンドリーである。
こちらが「エフセキュア ヘルスチェック」を行ってくれるWebサイト。対応しているのはIE6、IE7となっている。OSや各種ソフトの更新プログラムの有無をワンクリックでチェックしてくれる便利なサービスだ |
ネット犯罪者との闘いに終わりはくるのか?
「最近のネット犯罪の首謀者は、どん欲なまでにお金をむさぼる」、そう語るマリアさん。近年の犯罪者たちは非常に狡猾で、その手口も多様化してきているという。「最近あった例では、ネットバンキングでの被害が報告されています。ユーザーを本物と寸分違わぬ偽のWebサイトへ誘導し、IDやPasswordの情報を収集してしまうのです。もちろん、送金先は犯罪者の持つ口座へと改ざんされています。しかも、悪質なのはその処理自体が正常に行われてしまう点です。だからユーザーは被害に遭ったことに気が付かない」。恐ろしい話だが、これは決して"対岸の火事"ではない。他人事でもない現実が、悲しいかな日本でも起こりうるというのが事実なのだ。
最新の犯罪事例の手口をノートにメモしながら、わかりやすい形で説明してくれたマリアさん。世界に点在するPCを経由して巧妙に自身の居所を隠す手口には、思わず驚嘆してしまう。さながらSF小説のお話が現実化したかのよう |
「我々も警察機関と協力して犯罪者の逮捕に貢献した事実があります。ですが、犯罪者たちも狡猾で組織全体を壊滅させることは非常に困難です。ですが、その闘いに勝利する日が来るよう、日夜努力し続けます」と頼もしいお言葉も。エフセキュアは、本国フィンランド、米国サンノゼ、マレーシアのクアラルンプールにセキュリティ研究所を構えている。そこで世界各国で得た情報を元により堅牢で安全性が高いセキュリティシステムを研究・開発しており、その恩恵をユーザーは得ることができるのだ。
エフセキュアの研究所スタッフや日本法人のスタッフたちが最新のウイルス情報やセキュリティ情報を展開している「エフセキュアブログ」 |
"かけがえのないものを守る。"この言葉には、エフセキュアが単にコンピュータウイルスからPCを守るだけではなく、今や生活必需品となったPCに保存された様々なユーザーのデータ、想い出、記録……といった大切なものをガードするという意味が込められているように感じられる。その存在を意識させることなく、ユーザーのPCを包み込むように守る。他社製品とは異なり、そこに優しさを感じるのは、技術重視の製品作りではなく高いセキュリティ性能をベースとしてPCを中心としたユーザーの生活すべてを守るという企業風土があるからだろう。今後、Macintosh版やスマートフォンでの展開もあるというから、エフセキュアの動向に注目していきたい。