最近はFXでも「自動売買」が人気を集めている。投資家はシグナル・プロバイダーを選び、後は、シグナル・プロバイダーが発信する売買シグナルに沿って、自動的に売買してくれるというものだ。
ここに来て、複数の証券会社、あるいはFX会社が自動売買に着目し、新しいサービスとして提供し始めているが、この手の仕組みで一日の長があるのが、ひまわり証券だ。同社が自動売買に着目して、実際に投資家向けのサービスを提供するようになったのは、今からもう10年近くも前にさかのぼる。
現在、ひまわり証券は「Trade signal」という自動売買ツールを提供している。このツールは、システムトレードの手法を構築・検証したり、あるいは投資家が自ら設定した自動売買を行ったりすることに利用できるものだが、誰もがこの手のシステムを組めるわけではない。
そこで、ひまわり証券は、世界のさまざまなシグナル・プロバイダーに目をつけた。彼らが構築しているシステムを、個人投資家向けにリリースする。そうすることによって個人は、システム構築の経験が無かったとしても、手軽に自動売買を利用できるようになる。
今回から6回に分けて、ひまわり証券が提供している売買システムのなかから、注目されるものをピックアップし、解説していく。第1回目は「マエストロ」だ。
マエストロは、ひまわり証券の投資情報室のチーフアドバイザーである堀川秀樹氏が考案した売買戦略を、Trade signalで自動売買できるようにした自動売買システムだ。2008年6月からリリースされ、1年半が過ぎようとしている。
この間の運用実績は、まさに目を瞠るものがあった。
参考までに一覧表を見てもらおう。これは2008年6月から2009年5月までの、月間の取引状況と運用実績を示したものだ。投資対象銘柄はTOPIX先物で、これを1枚取引した場合の年間利益は、実に531万5,000円にも達した。特にリーマン・ショックをはさんだ3カ月間、マーケットのボラティリティが非常に大きかった時期に、大きな利益を確保している点が注目されるところだ。
マエストロの一番の特徴は、投資対象を日経225先物ではなく、TOPIX先物にしたところだろう。これは、マーケットインパクトを最小限に抑えるためでもある。
マーケットインパクトとは、投資家が一斉に買ったり、売ったりすると、それだけで相場が大きく動いてしまうことだ。特に、システムトレードの人気が高まるにつれて、多くのシステムが同時に、同方向の注文を大量発注するため、マーケットインパクトをいかに回避するかということが、システムトレードを行ううえで、とても重要になってきた。
TOPIX先物は、日経225先物に比べて取引参加者が少ないため、マーケットインパクトを最小限に抑えることが期待できる。これが、TOPIX先物を投資対象にした一番の理由だ。
次に、仕掛けと決済のタイミングを工夫していること。特に日経225先物を利用したシステムトレードは、寄り付きエントリー、大引け決済というロジックを用いているものが多い。これは、日本時間の朝方に終わる米国マーケットの日経225先物の動向を見たうえで、東京マーケットの寄り付きの売買判断を下すためだ。
ただ、多数のシステムが似たような投資行動を取ると、前述のマーケットインパクトによって、高値を買ったり、安値を売ったりすることになりかねない。そこで、マエストロは仕掛けと決済についてもさまざまな角度から検証を加え、マーケットインパクトを考慮に入れたとしても、成績を向上させることができるタイミングを見出したという。
システムトレードは、ある程度、長く成績を見ることが大事だ。1回、2回、あるいは数日、1週間という短いタームで結果を求めようとすると、必ずどこかに無理がかかる。やはり3カ月程度のタームで見て、そのシステムが有効かどうかをチェックするのが肝心だ。そして、その間にどのくらいの最大ドローダウンがあったのか、損益曲線はどのような形になっているのかなどを見るようにする。ちなみにマエストロの場合、すべてのトレードを通じての最大ドローダウンは、1枚につき82万円のマイナスだ。
また、損益グラフを見ると、比較的きれいな右肩上がりになっている。マーケットが大きく下ブレした場面もあったのに、これだけ安定的に利益を積み重ねている点は、大いに評価できる。