--Qtが進めているというWebとネイティブのハイブリッドアプローチについて教えてください。
Knoll氏: コンテンツ配信メカニズムとしてのWebの役割が大きくなってきました。スクリプト言語でさまざまなことをしたいという流れがあり、Web開発者は増えています。ハイブリッドは、これが何を意味するのか、Qtに何ができるのかを考えるプロジェクトです。
Web/スクリプト言語とネイティブの2つの世界をどうやって結びつけるかという点で、JavaScriptとQtの拡張で構成されるQMLはその1つといえます。
Kihlberg氏: 自動車、消費者家電ではWeb対応が進んでいます。Qtはこれを容易にすることを考えています。
--Qt CreatorでIDE分野に参入しました。ここでの戦略はどのようなものでしょうか?
Knoll氏: 数年前より、クロスプラットフォームのIDEが必要だと感じるようになりました。Qtでは、EclipseとVisual Studio向けのプラグインがあります。EclipseはさまざまなOSで動きますが、Javaベースです。一方、QtはC++です。
このような背景から、フレームワークだけでなく、開発者が必要とするスタックをすべて揃えることにしました。
これまで開発者は、WindowsはVisual Studioで、Mac OSではXcodeで、Linuxではコマンドラインとテキストエディタで開発しており、プラットフォームの切り替えは容易ではありませんでした。Creatorにより、Windows/Mac/Linuxで同じ開発エクスペリエンスを提供します。Qtのフレームワークはクロスプラットフォームですが、開発エクスペリエンスもクロスプラットフォームになりました。"どこでも実装、どこでも開発"といえます。
実際、ニーズはあったようで、SDK(Creatorが含まれている)のダウンロードは前年比250%増加しました。
--最新版となるCreator 1.3のベータ版がリリースされました。どのような機能がありますか?
Knoll氏: C++リファクタリングが最大の特徴です。そのほか、Symbianの初期サポートやユーザビリティでもいくつか改善されています。
Kihlberg氏: (Creator 1.3を含む)Qt 4.6は、モバイル開発者をターゲットとした初のリリースとなります。我々は先に、NokiaのLinuxプラットフォーム「Maemo」のポーティングを発表しました。QtはすでにSymbianに対応しているため、Maemo開発者はSymbianともインタラクトでき、モバイル開発者の将来を確約します。
Creatorの次期版では、モバイル開発者向けの機能をさらに盛り込む予定です。
--iPhoneやAndroidのサポートは?
Kihlberg氏: モバイルでは現在、Symbian/Maemo/Windows Mobileをサポートしており、これ以外については、何も発表してません。iPhoneはオープンではありません。Nokiaはオープンを支持する戦略です。
ターゲットと言う意味では、Symbian/Maemo/Windows Mobileの3つはモバイル市場でかなりのシェアを占めています。Qt開発者は主要携帯電話向けにアプリケーションを開発できるといえます。
今後の市場の発展を見ながらとなりますが、SymbianとMaemoは最初のステップと考えています。
--ハードウェアがどんどん高性能になっています。ソフトウェア側としてQtではこれを活用するような取り組みがありますか?
Knoll氏: シングルコアではコードをリニアに作成できましたが、マルチコアではソフトウェア側に課題があります。これは実は、コンピュータ科学ではまだ解決されていない難しい課題です。
Qtでは現在「Qt Concurrent」として、模索を進めています。これは、マルチコアで拡張するアプリケーションを作成するためのフレームワークで、フレームワークがロジックを分散してくれます。昨年Qtに統合しました。WebKitと共に、Qt開発者が高い関心を示しています。
今後は、GPUの高度化に伴い、グラフィック周りでもこの問題が出てくると思います。Qtでは現在、研究を進めているところです。
--LGPLオプションを加えましたが、収益性に影響は?
Kihlberg氏: 商用ライセンスも引き続き提供しています。LGPLにより、Qtをもっと知りたいという新しい開発者が増えました。サポート、コンサルティング、トレーニングの需要は増えています。
現在、力を入れているものの1つにコミュニティ活動があります。「Developer Network」を開設したほか、認定プログラム「Qt Certification Program」も発表しました。
イノベーションはどこででも起こるが、それがどこかはわからないといいます。我々は、さまざまな業界で使われるフレームワークを目指しています。