マイクロフォーサーズは、レンズ交換式カメラの小型軽量化を実現する新プラットフォームだ。小型のために気軽に持ち歩け、デジタル一眼レフカメラのようなレンズ交換でさまざまな撮影が楽しめるのがメリットだ。今回は、その機能を見ていこう。
初心者向きの「DMC-GF1」
マイクロフォーサーズ規格のカメラは現時点で4機種がリリースされている。その中でパナソニック「LUMIX DMC-GF1」とオリンパスの「OLYMPUS PEN E-P1」が最新モデルであり、両者ともこれまでのデジタル一眼レフカメラのような形ではなく、コンパクトデジカメに近いスタイルになっているのが特徴だ。
レンズをのぞけばGF1で285g、E-P1でも335gで、350ml缶のジュースよりも軽い。レンズを装着しても、小型のレンズを選べば500mlのペットボトルよりも軽量なので、女性でも持ち歩きやすい。デジタル一眼レフカメラに比べれば凹凸も少ないので、持ち歩きで邪魔にもなりにくいのがメリット。
撮影方法もコンパクトデジカメ風。通常、デジタル一眼レフはファインダーをのぞいて撮影するのに対し、コンパクトデジカメは背面液晶を見ながら撮影する。マイクロフォーサーズは、構造上光学ファインダーがないため、液晶のライブビューを見ながら撮影する形になる。これまでコンパクトデジカメに慣れた人であれば簡単に撮影できるはず。
ボディサイズも撮影方法もコンパクトデジカメ風だが、その本質はデジタル一眼レフカメラと同じ本格的な撮影機能だ。GF1もE-P1も、モードダイヤルをP/S/A/Mに合わせると、絞りやシャッタースピードを変更し、自分の意図したとおりの撮影が可能になる。
こうしたマニュアル操作を使いやすくするために、GF1の背面右上、E-P1の背面右上と十字キー周辺にダイヤルが設けられている。このダイヤルを回すことでシャッタースピードや絞りが変化するので、ボタンを何度も押すより素早い操作が可能なのだ。
GF1はダイヤルが一つだが、ダイヤル自体を押し込むことで設定項目が変わり、Mモード時はシャッタースピードと絞りの切り替えができる。SやAモード時は、シャッタースピード(または絞り)と露出補正の変更が1ダイヤルで行える。
それに対してE-P1は、1つのダイヤルはシャッタースピード、もう1つは絞りの変更に使え、より素早い操作が可能になっている。
ホワイトバランスやISO感度などの撮影設定の変更には、GF1はQ.MENUボタンを、E-P1では十字キー中央のOKボタンを使う。Q.MENUボタンを押すと、画面の上下に並ぶ設定アイコンにアクセスできるようになり、左右ボタンを使って任意の設定にカーソルを合わせ、上下ボタンで設定を変更する。コンパクトデジカメのLUMIXシリーズと同じ操作性なので、慣れている人は迷わないだろう。その代わり、設定項目が多いので、設定を探すのがちょっと大変。
E-P1は、設定画面の表示方法を選択できる。画面右側に設定項目が縦に並ぶ表示か、1画面内に設定項目を一覧表示するかの2種類が用意されており、縦に並べた場合は十字キー周辺のダイヤルでカーソルが上下し、右上のダイヤルで設定変更ができる。一覧表示にした場合は十字キーで項目選択、2つのダイヤルいずれも設定変更に対応する。一覧性と設定変更操作のバランスはE-P1の方がいいように感じる。
撮影機能については、まずオートフォーカス(AF)が特徴的だ。マイクロフォーサーズは構造的にAFがコントラストAFになる。これは通常のデジタル一眼レフとは異なり、コンパクトデジカメで使われる方式だ。そのため、被写体のコントラスト差を探す動作が必要で、デジタル一眼レフに比べてAFがどうしても遅くなる。
このAFに関してはGF1の方がバリエーションが豊富で、AF速度も高速。E-P1は11点AFか1点AFのみだが、GF1は追尾AF、23点/1点AFがあり、AF枠のサイズも変更できるので、より細かい部分にピントを合わせやすい。AF速度もGF1の方が高速だ。
ライブビューならではの顔検出機能は両モデルとも搭載。E-P1の方はやや検出が弱めという印象だが、GF1は検出精度が高いだけでなく、個人を認識する個人認識機能も搭載しており、より多彩なAF機能を備えている。
ユニークな写真表現を楽しめる「E-P1」
写真を楽しむ機能として、E-P1に搭載されている「アートフィルター」は面白い。独特の雰囲気のある芸術的な写真が簡単に撮れるようになる。ポップアート・ファンタジックフォーカス・デイドリーム・ライトトーン・ラフモノクローム・トイフォトの6種類があり、ライブビューで効果を確認しながらいろいろ試してみると楽しい。
動画撮影機能が強化されているのもポイントだ。両モデルとも、1280×720のHD動画の撮影に対応。フルHDのテレビに表示しても美しい映像が撮影できる。GF1は、動画撮影専用ボタンを設けており、いつでもすぐに動画撮影を行えるのが便利だ。動画撮影中のAF動作も速く静かで、マニュアル撮影機能を使って、普通のビデオカメラでは撮れないような多彩な動画が撮影できる。
E-P1は、モードダイヤルを動画に合わせ、シャッターボタンで動画撮影をする形。AFがあまり速くないのと、AF動作音が記録されてしまうため、基本的には据え置きで被写体を撮影するような場合に適している。ただ、アートフィルターをムービーにも使え、これが楽しい。普通の動画とは異なり、フィルターによっては処理速度の問題でコマ落ちした映像になるが、逆にそれがいい味になって楽しめる。
コンパクトデジカメ風とはいえ、大きく異なるのがレンズ交換のできる点だ。マイクロフォーサーズ規格のレンズは、いずれもコンパクトなデザインで、コンパクトボディの機動性を損なわない。遠くのものを大きく写す望遠レンズ、広大な景色を一度に収める広角レンズ、背景をキレイにぼかせる単焦点レンズといったさまざまなタイプが用意されている。コンパクトデジカメに比べて大きな撮像素子を使っているので、画質の面でも有利になる。
レンズ交換でさまざまなシーンに対応できる懐の深さがあるのが、レンズ交換式カメラの良さ。これは高倍率ズームレンズ「LUMIX G VARIO HD 14-140mm/F4.0-F5.8 ASPH./MEGA O.I.S.」。GF1にはちょっと大きめだが、広角から望遠までを1本でカバーできるほか、動画撮影時のレンズにも最適。もちろん、E-P1にも装着できる |
つまり、マイクロフォーサーズはコンパクトデジカメとデジタル一眼レフの「いいとこ取り」を狙ったシステムであり、簡単に楽しく写真を撮ることと、本格的にじっくりと写真を撮影するという2つの写真スタイルを実現できるカメラなのだ。