SAP NetWeaverの先駆者、SOAの力で周囲に恩返しをしたい
――続いては、SAPマイスターに認定されたコンサルタントの1人、石橋氏である。数多く存在するSAPコンサルタントの中で見事殿堂入りを果たした同氏は、これまでどんなキャリアを積んできたのか。また、今後はどのような方向に進んでいこうとしているのか。そのあたりの詳細を伺った。
SAP: SAPマイスターにいち早く殿堂入りされましたね。おめでとうございます。まず、これまでどのようなキャリアを積まれてきたのかお教えください。
石橋氏: 最初はSEとして公共系のシステム開発を担当していたのですが、ERPに興味があって2003年にテクノスジャパンに転職しました。自分なりにERPに強い企業を調べ、テクノスジャパンであればERPの仕事ができると考えたからです。
ところが実際には、そうした思惑とは少し違った展開になりました。初めこそERPのアドオン開発に携わらせてもらったのですが、すぐにSAP NetWeaver(当時のSAP NetWeaver XI)の技術検証を担当することになったのです。
社として初めてSAP NetWeaverに触れることには意味があると思いましたが、業務パッケージが中心の当社の中で、ミドルウェア系を担当することには多少の違和感がありましたね。
SAP: しかし、その経験が今につながったわけですね。
石橋氏: そうですね。SAP NetWeaverの技術検証を担当し、その延長線上でSOAソリューションセンターに所属していますが、最近ではSOAのコンサルティングの案件も増えて、SOAの時代が来たと実感しています。
SAP: SOAのコンサルティングをする上で、SAP NetWeaverの経験は大きなアドバンテージになったのではないでしょうか。
石橋氏: 当社はSAPとの付き合いが長く、SAPを通して業務システムを見てきたという感じがありますが、SOAも同じです。SAPを通してSOAを学んできたのです。SAP NetWeaverを調査しているうちに、「SOAとはこういうものなんだ」ということが分かってきました。
SAP: SAPマイスターとなるために、SOAについて改めて勉強したこともあったのでしょうか。
石橋氏: 独自に調査したり、現場で実践したりしていましたが、その知識が体系化されていたわけではありませんでした。SOAの概論のトレーニングを受けることで、SOAとSAP NetWeaverのつながりが見えてきましたし、製品知識や導入方法論などが1つになったと思います。
自分の中で知識を体系化して消化したことで、SOAについてお客様に自信を持ってお話ができるようになり、説得力が大きく違ってきたと感じますね。
今まで、本当にSOAがどれほど重要になるのか自分の中で半信半疑の部分もあったのですが、今では、これからはSOAの時代だと確信を持って語ることができます。
SAP: コンサルタントとして普段から心掛けていることはどんなことでしょうか。
石橋氏: 理論や技術も大事ですが、気持ちの部分を大切にしていきたいと考えています。
この考えは以前から変わっていません。お客様の気持ちをくみ取ると同時に、コンサルタントとしての私の気持ちも伝えたいと思っています。
お客様の気持ちになって、ソリューションを提案していきたい。他人事でものを言うような評論家にはなりたくないのです。お客様が最後に見るのは、こうした人としての気持ちの部分ではないでしょうか。
その意味で、自分自身が良いと思えないものは、お客様にお勧めできません。今回、SAPマイスターになったことは、それだけSAPの世界を知っている証でもあります。より確信を持ってSOAをお勧めするよりどころになると思いますね。
SAP: SAPマイスターになったことで、ご自身の中で変化はありますか。
石橋氏: ミドルウェアの分野は早くから手掛けてきたこともあって、知識やノウハウに自信がありましたが、SAPの業務モジュールなど業務システムの分野が自分の弱点だと思っていました。
ERPの導入にあたっても、アドオン開発の手伝いしかできず、広く浅くしか関われないために、どうしても業務システムの知識を深められないと焦りを感じていたんです。
特に、業務パッケージを得意とする当社にあって、業務システムの分野が弱いということは芯がないのと同じではないか、という不安もありました。
ところがSAPマイスターとして認められるためには、広く浅い知識を持っていることが、逆にプラスに働きました。SAPマイスターとして殿堂入りできたのは、これまでいろいろなERPの案件に携わって、手伝いをさせてもらったお陰です。これからはSOAという力で皆様に恩返しをしたいと思っています。
SAP: 具体的にはどんな形で恩返しを考えていらっしゃるのでしょうか。
石橋氏: 今までミドルウェアはシステムの表面に出ることはなく、あくまでも裏方として機能する存在でした。しかし、SOAの世界では、SAP NetWeaverを基盤としたビジネス・プロセス・プラットフォームが「ビジネスとITの架け橋」という重要な役割を果たすことになります。つまり、私たちが直接お客様のビジネスの役に立てるわけです。
SOAソリューションセンターは、SOAに先鞭をつけるために、これまでSOAを研究し、知識を学んできましたが、これからは、営業の支援など業績の拡大に貢献することが期待されています。私自身は、営業支援という側面から積極的に関わって当社の発展に寄与することが、恩返しにつながると考えています。
SAP: すでにそうした活動にも取り組んでいるのでしょうか。
石橋氏: 最近、営業担当者と同伴してお客様を訪問することが増えています。そこで、感じるのは、SOAに興味があるお客様、SOAのことが分かっているようでいても、具体的にどこからどう手をつけていけば良いかが分かっていないケースが多いことです。
そこでお客様が悩んでいる業務上の課題を伺って、それをSOAでどう解決できるのかを考えてご提案していきたい、と思って取り組んでいます。実際にそうした案件は増えていますし、当社のホームページへのアクセスも、SOAというキーワードからのアクセスが一番多くなっています。
SAP: SOAが重要なキーワードとしてお客様に認識されてきたということですね。
石橋氏: 早くから取り組んでいる私にとっては、ようやく日の目を見たという感じです。ERPがこれからのキーワードだと信じて当社に転職してきただけに、業務システムの分野ではなく、ミドルウェアの分野を担当することになった時には、もどかしい思いもしました。しかし、その時から、「SOAが次のキーワードになるから」と言われていて、自分自身もそう納得させて取り組んできました。
今、SOAが注目されるキーワードとなり、SAP NetWeaverに早くから関わっていたことで、SOAの先駆的存在になれたことは幸運だったかもしれません。これからは、私の出番がどんどん増えると楽しみにしています。
SAP: 最後にお伺いしますが、将来はどんなエンジニアになりたいとお考えですか。
石橋氏: 今はITアーキテクトを目指しています。SAPマイスターになったことは、そのスタートラインに立ったことだと捉えています。今後は、私自身がビジネスとITの架け橋になれるように、頑張りたいと思っています。