モーターショーでは、派手な自動車メーカーのコンセプトカーに押され気味で影が薄い二輪車。加えて今回はカワサキが辞退したことで国内メーカーがそろわなかったのが残念だ。それでも、世界初出展となるニューモデルの展示も多くバイクファンでなくても注目したいところ。SF映画に登場するような未来的デザインのコンセプトカーと違い、二輪車はコンセプトモデルといってもすぐに市販されそうな現実的なものが多い印象だ。

ホンダは最新技術をクラシカルなスタイルでまとめた空冷4気筒の「CB1100」を出展

ホンダブースは四輪車などと合同で展示され、単独ブランドして最大面積となっている

CB1100は、空冷4ストロークDOHC並列4気筒エンジンを搭載した市販予定モデル。ゆったり乗る、見せる、見られることを意識し、高出力よりも乗り味にこだわり、さらには停まっているときのたたずまい、走っているときの勇姿を徹底して追求したという。実際に、空冷エンジン特有の冷却フィンは、最近の水冷エンジンでは見ることができない造形で、これこそバイクのエンジンともいうべき存在感だ。オイル通路をシリンダーヘッド内に設け、アルミスリーブシリンダーとの組み合わせで優れた冷却性能を発揮。さらに、電子制御燃料噴射装置「PGM-FI」を組み合わせることで、環境性能も追求している。

車体のサイズや車重は750ccクラスと同程度で、取り回しがよくコントロールしやすくなっているという。ホイールは前後18インチで、スリムでコンパクトなフューエルタンクを採用した。4フォアを彷彿とさせる流れるようなエキパイや、クロームメッキの前後スチール製フェンダーなど、レトロな雰囲気を出しつつも上品にまとめられている。

こちらも市販予定モデルの「VFR1200F」。搭載されるのは、新設計バンク角76度の1200ccV型4気筒エンジン。左右対称配置シリンダーや、クランクシャフトのクランクピンを28度オフセットした位相クランクの採用で、不快な一次振動を理論上ゼロに抑えながらもV型4気筒の独特な躍動感を実現している。ホンダの市販二輪車として初めてスロットルバイワイヤ方式を採用。スロットルバルブを電気的にコントロールすることで、レスポンスを高めている。ブレーキは6ポットキャリパーを装備するとともにコンバインドABSを採用している。バリエーションとして、新開発のデュアルクラッチトランスミッションを搭載したモデルも市販が予定されている。

市販予定車の「CB1100」。タンクはコンパクトでスリムな形状をしている

「CB1100」のABS仕様。フロントのキャリパーに違いが見られる

60年代に活躍したホンダRCレーサーをオマージュした「CB1100 Customize Concept」

「CB1100 Customize Concept」は、シングルシートやビキニカウル、メガホンマフラー仕様

「VFR1200F」は、一次振動が理論上ゼロの位相クランクを採用した新設計V4エンジンを搭載している

車体色と同色のパニアケース、リア上部に装着できる専用トップボックスが用意される

クラッチ操作が不要なフルオートマチック走行ができる「VFR1200Fデュアルクラッチトランスミッション」

すでに市販が決定しているハイネック・クルーザー「VT1300CX」

純正アクセサリーで装飾された「VT1300CR」

快適なロングツーリングを目的にした「CB1300 SUPER TOURING」

ABSが搭載された「CBR100RR」(手前)と「CBR600RR」(奥)

Vツインエンジンと無段変速機を搭載したコンセプトモデル「DN-01」

電動コミューターのコンセプトモデル「EVE-neo」

アイドリングストップ機構を採用した市販予定車「PCX」

2009年MotoGPに参戦しているダニ・ペドロサ選手のマシン「RC212V」など、レースマシンも展示

ヤマハSR400が直噴ガソリンエンジンになって帰ってくる

"A moment - 感動の一瞬"をテーマにしたヤマハブース

大きな話題のニューモデルもなく、ややあっさりした印象のヤマハブース。「ヤマハ ミュージアム」と題してギャラリーのような演出を施している。ブースの中心になるのは電動コミューターやハイブリッド自転車など。その中で注目を浴びていたのが「SR400(F.I.)」だ。

SR400(F.I.)は、空冷単気筒エンジンとシンプルなデザインで30年以上支持されているベストセラー「SR400」に、フュエルインジェクションを搭載したモデル。SR400は昨年生産終了となったため、インジェクション化されての再登場を期待していたファンも多かったが、参考出品という形ながら早くも登場した。サイドカバーやエンブレムなど若干デザインの変更があるが、基本的にSR400と変わっていない。早くの市販化を期待したい。

00%電気エネルギーで走るエレクトリック・コミューター「EC-03」

経験や世代を問わず多くの人に楽めることを目指した「EC-f」(右)と「EC-fs」(左)

スタイリッシュなカラーでまとめられた「EC-fs」

「PAS Brace-L Special」は、スポーティな走行性能とスタイリングを兼ね備えた男性向けモデル

走行中の心拍数をセンサーで計測し、運転者にとって適切な負荷となるようアシスト力を制御する「PAS er」

フューエル・インジェクションを搭載した「SR400 F.I.」

シンプルなデザインや乗り味はそのままに、クリーンな環境に貢献するという

トラクションコントロールやABS、連動ブレーキなどの最新制御技術を身につけたオブジェ「The Lord of YAMAHA Adventure's」

参考出品の空冷V型2気筒エンジンのクルーザー「XVS950A」(輸出仕様車)

昨シーズンのMotoGPでライダー、チーム、コンストラクターの年間タイトル3冠を達成したレース専用マシン「YZR-M1」

「VMAX」のクレイモデルも展示されている

こちらは実車の「VMAX」

話題になったレクサス「LFA」の量産開発用プロトタイプエンジンも展示されている。トヨタとヤマハ発動機の共同開発により、モーターサイクルの発想も加えて、低重心、コンパクト、高回転型の設計に貢献しているという。また、サウンド開発には音響工学の専門家であるヤマハも参加したという

スズキ、二輪車初700気圧高圧水素タンクを搭載した燃料電池スクーター登場

目立つところに並ぶコンパニオンたちにどうしても目がいってしまうスズキブース

スズキブースの二輪車でメインとなるのは、空冷式の燃料電池システムを採用した燃料電池スクーター「BURGMAN FUEL CELL SCOOTER」だ。

前回、2007年東京モーターショーに出展されたコンセプトモデル「クロスケージ」は、燃料電池バイクということもさることながら、やや未来的デザインで現実感がないものだった。その「クロスケージ」の技術をスクーターモデルに採用し、より現実的で身近な燃料電池二輪車となった。空冷式燃料電池システムを採用することで軽量、かつコンパクトでシンプルな構造となっている。二輪車で初の700気圧の高圧水素タンクを使用し、実用的な航続距離を実現している。

700気圧高圧水素タンクを搭載している「BURGMAN FUEL CELL SCOOTER」

「グラディウス650」に新設計のVツインエンジンを搭載した「グラディウス400 ABS」

「バンディット1250S ABS」のフルカウル仕様「バンディット1250F ABS」

海外の二輪車

いくつかの海外二輪車メーカーの中では、ハーレーダビッドソンのブースが巨大で目立っていた。ハーレーダビッドソンは2010年モデルを中心に展開。特に今回のモーターショーで初出展される目新しいニューモデルはないものの、国内で人気とあって展示はかなりの力の入れようだった。

また日本ではなじみは薄いが、ヨーロッパ市場で人気のキムコや、イタリアのアディバなどのブースもにぎわっていた。

オーナーズリンクをテーマにしたハーレーダビッドソンのブース

「CVOストリートグライド FLHXSE」(手前)と、少量生産モデルの「CVOウルトラクラシックエレクトラグライド FLHTCUSES」

ダイナファミリーのCVOモデルで日本初上陸の「ダイナファットボブ FXDF2-CVO」

長距離でも快適なツアラー「ウルトラクラシックエレクトラグライド FLHTCU」

ビューエルのスポーツライティング向けモデル「ファイアーボルト XB12R」

オン&オフのマルチパーパス、ビューエル「ユリシーズ XB12XT」

台湾メーカーのキムコは、ヨーロッパ市場で人気がある

どんどん丸みを帯びていく国内のスクーターと比べ、シャープなデザインが特徴

4ストローク単気筒水冷エンジンを搭載する「DownTown250i」

屋根が付いた全天候型スクーターを展示するイタリアのアディバブース

参考出品の「A3Route」は、独自のメカニズムでバンク可能なフロント2ホイールを採用している