秋の実りをさらに引き立てる癇酒
「食欲の秋」の到来だ。寒さを前に栄養を溜め込む山の食材、根菜類や茸も種類が豊富になってきた。そして新米、新蕎麦が出てくる季節でもある。滋味溢れる食材をさらにおいしくしてくれるのが、燗酒だ。ところが、未だに「燗酒は苦手」という方がいる。その理由を聞いてみると、癇の方法が間違っているケースが多い。例えば、温度を間違っていたり、お酒(銘柄、そして造り)の選び方を間違っていることがある。
これからの季節は癇酒が特にうまく感じられる |
そこで本企画では、前編では基本的な癇のつけ方解説を、後編では燗上がりする3タイプの日本酒を用意。東京・三軒茶屋の和食店「木村商店」木村国博さんにご協力いただき、それぞれの燗酒に合う肴を紹介していく。
まずは燗のつけ方から解説していこう。燗つけの基本は湯煎である。必要なものは鍋、徳利、おちょこ、温度計。これだけである。
燗の温度はおおよそ40℃~55℃と考えておくとよい。体温とほぼ同じ40℃のぬる燗から、50℃以上の熱燗まで、酒のタイプによってベストの温度は変わってくる。湯煎とはつまり、徳利をそのまま鍋に入れて加熱する方法。急な温度変化を避けたいので、お湯が温まるのを待たずに、徳利を入れておくとよい。
もし燗酒用のちろり(日本酒を関する道具)があれば、それを使いたい。錫ちろりは高価なためなかなか家庭用には購入できないが、これを使用すると口当たりがまろやかになる。
基本的なお癇のつけ方
1.鍋でお湯を沸かす。鍋底からぷくぷくと気泡が上がってくるまでに、日本酒を入れた徳利(ここではちろりを使用)を入れる。中火~弱火にしてゆっくりと温度を上げていく。全体を均一に温めるため、急激な加温はよくない。2.おちょこは中に湯を張るか、鍋に暫く浮かべて温めておくとよい(ここでは別鍋で行ったが、癇をしている鍋で行っても可)。
3.適温で徳利をあげる。
旨い癇酒がいただけるのだ。これくらいの手順は踏んでもらいたい。さてさて次回後編では、燗酒向きの日本酒と肴を紹介していく。お楽しみに。