今年はさまざまなメディアで「クラウド元年」と言われており、その注目度については今さら言うまでもないだろう。ベンダー各社も企業利用を対象としたクラウド関連の製品やサービスの提供を開始しており、企業でもそろそろ普及期に入ってきている。
クラウドコンピューティングのメリットについては声高に語られているが、「セキュリティ」、「データ保護」といった守りの側面は忘れられているような気がしないでもない。
企業システムとして使うインフラにとって、安全性や事業継続性は必須な要素である。データ保護のための各種製品を提供しているCAでは、クラウドコンピューティングをどのように見ているのか?
今回、リカバリ・マネジメント/データ・モデリング事業部 テクノロジ・ストラテジ担当バイス・プレジデントであるエリック・ピッチャー氏に、クラウドコンピューティングに対する同社の戦略について話を聞いた。
--CAはデータ・リカバリという観点からクラウドコンピューティングをどのようにとらえているか?--
ピッチャー氏: クラウドコンピューティングは、「革命的な技術」と「既存の技術の発展」のどちらであるか議論されることが多い。確かに、クラウドは企業に対して多くのメリットを約束するものだ。しかし、我々にとってクラウドはあくまでも既存の技術の発展型であって、革命ではないと認識している。
もっと詳しく言えば、クラウドはデバイスの一種だ。ハードディスク、NAS/SAN、テープストレージと同様のデータ保護のアーキテクチャを構成する要素の1つである。したがって、データ保護のためのデバイスとしての特徴を見極める必要があるのだ。
--クラウドがデータ保護のデバイスとしてどのような特徴を備えているのか教えてほしい--
ピッチャー氏: 例えば、ハードディスクとクラウドを比べてみると、バックアップやリストアといった作業の処理スピードはハードディスクのほうが速いが、保護レベルはクラウドのほうが高い。加えて、クラウドでは動的な作業が行える。
次は、具体的なバックアップの方法で考えてみよう。イメージバックアップはデータ量が大きいため、クラウドに対し入れたり出したりといった作業は難しい。対するファイルバックアップはデータ量が少ないため、クラウドでも対応できる。このように、それぞれのデバイスには長所と短所があるので、データのニーズに応じてデバイスを使い分ける必要がある。
データ保護のための仕組みを構築する場合、技術からだけでは決断できない。「コスト」、「パフォーマンス」、「サービスレベル」という3つの要素を組み合わせて考えなければいけない。コストとサービスレベルはトレードオフの関係にあるので、自社の状況とニーズに応じて、正しいバランスを見極めることが重要だ。
--現在、クラウドは正しく理解されているのだろうか?--
ピッチャー氏: まず、クラウドが約束するもの、つまり利用メリットは十分浸透しているだろう。しかし、テクノロジーと経済性という観点からの分析は不十分だと思う。企業がクラウドを導入する場合、ビジネスの要素から分析を行うことがポイントである。
--CAの製品はクラウドに対応しているのか?--
ピッチャー氏: 例えば、バックアップ・ソフトウェアであるARCserve Backup r12.5は、企業内で利用されるプライベートクラウド向けの機能を備えている。しかし、社外などの外部のクラウド向けの機能はこれから対応していく。