Freescaleのマルチコア戦略
Freescaleは車載向けマイクロコントローラと通信プロセサ市場でナンバーワンであり、これを維持し、かつ、市場をコンシューマやインダストリアル分野に広げ、組み込み市場でのグローバルリーダシップ確立を目標としている。
自動車は燃費の向上などの環境対策や衝突回避などの安全対策の観点から、必要な情報処理性能が大幅に伸びているという。また、無線接続による情報システムや娯楽機能も装備され、このためにもプロセサが必要となっている。このような状況から、高級車になると100個以上のマイクロコントローラとセンサが実装されているという。
車載用途では高い品質を要求されるため、Freescaleでは、最先端より1世代前の安定した設計ルールを適用しており、100万個の初期出荷で不良ゼロを実現したという。また、エンジンコントロールなどでは温度や雑音などの点で動作環境が厳しく、あまりクロック周波数を上げられない。しかし、制御の高度化により高い処理性能を要求される。Freescaleでは、この要求に応えるため、e200シリーズというコアを提供している。
高性能を要求される駆動系の制御用のe200z7コアでは、10段のパイプライン構成としてクロックを264MHzに引き上げ、FPUやSIMDを装備して性能を向上させている。一方、ドアなどのボディ系ではあまり性能を要求されない。このような用途向けには、e200z0コアで対応する。このe200z0コアは4段のシンプルなパイプライン構成で、クロックも80MHzとなっている。
そして、この組み込み用チップの例は、e200z6(7段パイプライン、200MHzクロック)とe200z0コアを集積したマルチコア構成であり、2つのコアと主要ユニット間を、バスではなく、クロスバで結合するアーキテクチャとなっている。これにより3.5GB/sのバンド幅を実現し、バスネックで処理性能が低下することが無いようになっている。
一方、通信用プロセサは通信量の急増から、要求される性能の伸びはさらに大きく、FreescaleではQorIQシリーズの通信プロセサを提供している。
現状での最上位の「QorIQ P4080」では、1.5GHzクロックのe500mcコアを8個搭載している。このe500mcコアは32KB+32KBの1次キャッシュと128KBの2次キャッシュを内蔵している。そして、P4080チップは2チャネルのDDR2/3メモリインタフェースを持ち、それぞれのDRAMチャネルに1MBの3次キャッシュを持つという構成である。また、LTEの基地局などの用途では、複数のOSを動かしたり、ソフトウェアモジュール間のアイソレーションを高めたりする目的で仮想化が必要となっており、仮想化対応機能も備えている。