富士通FIPでは感染予防・拡大防止策として、次の対策を実施している。
- 保護具・衛星用品の備蓄(強毒・弱毒共通)
- 検温・症状チェック(強毒・弱毒共通)
- スクリーニング(入館規制)(強毒)
- 濃厚接触者への対応(強毒・弱毒共通)
- 従業員や家族への教育・啓発(強毒・弱毒共通)
マスクは、通常の事業者勤務者用としては2ヵ月分備蓄しているのに対し、データセンターでは6ヵ月分備蓄しているそうだ。
企業において最も悩ましい対応が「濃厚接触者」への対応だろう。同社を含む富士通グループで対応方法を決めている。強毒性インフルエンザに同居家族が感染した際は、感染が判明した日から感染者の病状が消失した後10日まで自宅待機を実施し、職場で感染者が出た際も同様に自宅待機を実施する。一方、弱毒性インフルエンザに同居家族が感染した際は感染者が抗インフルエンザ薬を処方された翌日から3日間の自宅待機を実施するが、職場で感染者が出た際は自宅待機を行わないという。
このように強毒性と弱毒性で自宅待機の方針が異なるのは、感染力が比較的弱いこともあり「今のところ、当社では新型インフルエンザの家族感染は、子供から感染した人が数%という低い数字である」と間氏。
また、BCPの策定は、「業務分類」、「要員調査」、「継続方針の決定」、「対策立案」という4つのプロセスに沿って行われる。
同社では、既存の業務を緊急時の対応方法から継続・縮小・停止の3種類に分類している。同氏は、「業務がリモートで運用できるかどうかは重要。ぜひ、事前に調べておいていただきたい」とアドバイスした。
具体的な対策としては、「時差通勤・通勤手段の変更」、「座席配置の変更」、「スプリット勤務」、「リモート運用」、「代替者・代替方法の明確化」、「要員の再配置」が立案されている。これらのうち、時差通勤、座席配置の変更、スプリット勤務は強毒性の場合のみの対策となっている。
また訓練としては、今年2月にスクリーニング訓練を実施したそうだ。同訓練では、入口でサーモグラフィーによる体表面の温度を測定して、感染者かどうかを選別する。そこで、同社の訓練では、社員間で感染しないように、各社員はマスクを着用して入口前で2mずつ離れて待機したのだが、「真冬ということで、外で待っている間に体温が下がってしまい、正確な体温を測定できなかった」というエピソードが披露された。この教訓から、気候に応じた対応が必要だという結果に落ち着いたそうだ。これも「すべて訓練したからわかったこと」と同氏。
以上が、同社のデータセンター向け新型インフルエンザ対策の概要となる。自社の新型インフルエンザ対策と比べて、いかがであろうか。企業において何を優先するかは異なるだろうが、事前にそれを明確にしておくかどうかは、対策を打つ上で重要だと思われる。同社の感染予防・拡大防止策、BCPは、経験とデータに基づくだけに、参考になるはずだ。