ダイソンは16日、新開発の扇風機「Air Multiplier(エアマルチプライアー)」の発表会を行った。製品の発売は11月2日を予定しており、直径25cmのモデル(ホワイト/サテンブルー)と直径30cmのモデル(ホワイト)が用意される。価格はオープンで、ダイソン オンラインストアでの販売価格は25cmモデルが3万7,000円、30cmモデルが3万9,000円。
エアマルチプライアーは、写真を見ただけでは何に使うのか分からないかもしれないが、扇風機だ。最大の特徴は、見てのとおり、"羽根がないこと"(実際は、羽根自体はあるにはあるのだが)。
一般的な扇風機では、羽根が起こした風がダイレクトに使用者に当たる。エアマルチプライアーの場合、羽根は胴体部分に隠れている。ここから上に向かって風を起こすのだが、エアマルチプライアーの上部のリングは、ちょうど飛行機の羽根を輪にしたような構造となっており、その端に細いスリットが設けられている。胴体内のファンで起こされた風は、細いスリットを通ることで、加速され、使用者のほうに向かう。すると、ファンで起こされた空気の流れ(高速だが少量)は、周りの空気を巻きこんで、大量だが比較的ゆっくりとした円形の気流となる。ここで動かされる空気の量は、胴体部分にある空気の吸い込み口から取り込まれる量の約15倍にもなる。
発表会場で製品と技術の説明を行っていた開発者のジェームズ・ダイソン氏によると、エアマルチプライアーは、この構造により、従来の扇風機にない、快適な風を実現することが可能だという。普通の扇風機では、1枚1枚の羽根が空気を送り出すため、どうしても空気の流れが断続的なものになってしまうのだが、エアマルチプライアーでは連続的な空気の流れとなり、より自然な風に近いものとなっているとのことだ。
また、羽根が表面にないことから、安全性にも優れる。さらに、扇風機のなかで一番の重量物であるモーターが胴体の一番下に設置されているため、安定性も高いなど、一般的な扇風機にはないメリットも持ち合わせている。
製品は、左右の首振り機構を備えるほか、10°の範囲で上下に角度を変えることが可能だ(一般的な扇風機では、モーターが上にあるため、角度の調整には、それなりの力が要るのだが、上部がほとんど空洞となっているエアマルチプライアーでは、指1本で軽々と角度を変えることができる)。
風量は、無段階で調節可能だが、会場で試してみたところ、風量を大きくすると、それなりの騒音を発生する(フルパワー時の消費電力は約40W)。ただし、その音は一般的な扇風機をハイパワーで動かした際の音とはあまり似ていない。どちらかというと、ノートPCのファンが高速回転している音に近い感じだ。また、高さの調節はできないが、これはエアマルチプライアーが、いわゆる卓上扇として開発されているためとのことだ。さらに、国内の一般的な扇風機に普通に装備されている、タイマーやリモコンなどは、装備されていない。
より自然に近い風や、技術的な面白さ、デザイン性の高さなど、優れる部分は確かにあるエアマルチプライアーだが、普通の扇風機が、数千円で購入できるなか、3万円以上という価格に日本の消費者たちはどう反応するのだろうか。