McNealy氏からバトンタッチして壇上に登場したのはLarry Ellison氏だ。同氏はまずOracleからSun顧客に向けた5つの約束を掲示し、SPARC、Solaris、MySQLにおける開発投資を従来以上に行っていく意向を示すとともに、OracleソフトウェアとSunハードウェアの連携をさらに強化し、これらを販売するスペシャリストを従来から倍増させる計画を打ち出した。OracleのSun買収における最後の壁がMySQLやJavaの存在と言われており、こうした懸念を払拭するOracleトップからの大きなメッセージだ。

キーノートはMcNealy氏からEllison氏へバトンタッチ

Ellison氏はまず最初にSun顧客に対して5つの約束を宣言

Sun買収の本気度を示したEllison氏だが、これは同時にOracleのハードウェアビジネスへの本格参戦を意味する。「ライバルらは『Oracleは本気じゃない、ハードウェアビジネスを売却するつもりだ』といった甘言でSun顧客の引き抜きを行っているようだが、とんでもない。SunのハードウェアとSolarisは強力な組み合わせであり、ここで動かすOracleソフトウェアとの組み合わせはどのシステムよりも高速だ」と述べ、ライバルらを牽制する。「われわれは勝利するためにこの分野に入ってきた。IBMとハードウェアビジネスの分野で競合していく」と述べ、IBMに対して正面から宣戦布告する。ライバルはMicrosoftではない。ましてやHPやDellでもない。あくまでハイエンドプラットフォームでIBMと競合するのがOracleの意向だ。

Ellison氏によるIBMへの宣戦布告。TPC-Cベンチマークで同じ結果を出すためのコンフィギュレーションの差をスクリーンを目一杯使って表現する

Ellison氏はSun SPARC+Oracle DBとIBM Power+DB2のTPC-Cベンチマークのデータを持ち出し、Sun+OracleがIBMのPower+DB2の組み合わせにパフォーマンスで勝利したことを宣言する。「この証拠が見たい人は水曜日を待つように」と加え、自身の水曜日のキーノートの内容に含みを持たせている。「IBMは"Building a Smarter Planet"とPRしているが、これが何を意味するかはよくわからない。だが"Smarter Computer"というなら、Sun + OracleのOLTPシステムは可用性でもパフォーマンスの両面でもIBMのそれを上回っている」と自信を見せる。

Sun+OracleとIBMのベンチマーク時のパフォーマンスの差を実際の数字で比較

OracleによるExadata Version 2の広告。「SunのハードウェアはOracleソフトウェアをIBM最速のマシンの2倍の速度で動作できる」というアピール

Sunユーザーへの"安心宣言"ともいえるOracleからの5つの約束、そして両社の協業成果から飛び出したEllison氏によるIBMへの"宣戦布告"。ライバル攻撃で毎回仮想敵を設定するのが得意な点で似たもの同士とも呼べるSunとOracleだが、「ハードウェアとソフトウェアの両面で競合するIBMと戦う」という共通認識で意見が合致した形だ。パートナーとしてのHPに一定の配慮を見せつつ、同じく競合するはずのDellやMicrosoftの名前が挙がっていない点で、Oracleが狙っている市場と、ライバルの存在の強大さがうかがえる。

もう1点、今回のキーノートで感じたのはOracleのSunに対する配慮だ。キーノート1本をSunの話題でまるまる割いて、さらにSunの歴史や技術を称えながらEllison氏がフォローにまわるなど、これまでのOracleの買収では最も気を遣っていると筆者は考える。それだけ顧客に与えた動揺が大きく、Oracleのハードウェアビジネス参入で業界のバランスを維持していくのがそれだけ難しいということを意味している。