SiliconBlueのFPGA
一般的なFPGAのトレンドとしては、微細化を利用した集積度の増加と高速シリアルインタフェースのデータレートの向上であるが、この方向とは異なり、SiliconBlueのFPGAは、集積度はあまり高くないが、低消費電力、ローコストにフォーカスしている。
携帯電話のような大量生産製品ではOMAPのような携帯向けに設計されたプロセサを使ったりASICを作ったりするが、他社との対抗上、セカンドディスプレイをつけたり、タッチパッド液晶にしたり、キーボードの口を出したりというような改良を緊急に行いたいという場合がある。新機能をサポートするためにはアプリケーションプロセサのソフトの改造は必要であるが、新規デバイスを接続するポートを増設するためにASICを作り直したのでは時間が掛かりすぎる。
このような場合に、SiliconBlueのFPGAでインタフェースを拡張してやれば、短期間で新たなI/Oデバイスなどがサポートできるという。
そして、FPGAというと消費電力が大きいというのが通り相場であるが、同社のFPGAは他のプログラマブルなデバイスと比較して消費電力が小さく、特にクロックを停止した時のスタティックな電力消費が少ないので携帯電話などの待機時間の長いデバイスに向くという。
そして、ウェハスケールパッケージ(WSP)を採用しており、「iCE65L04」の場合3.2mm×3.9mmと携帯機器にも収容し易い寸法である。また、パッケージ前の裸チップ(ダイ)としても供給できるという。また、一番小さい「iCE65L02」は、大量購入の場合は10ドルを切る値段ということで、ある程度の量産品にも使える価格となっている。
AlteraのStratix IV GTとArria III FX
Altera社のStratix IV GTはTSMCの40nmプロセスで製造されており、売りは11.3Gbpsの高速トランシーバマクロの搭載である。40Gデバイスと呼ぶ製品は、この11.3Gbpsのマクロを12個、100Gデバイスを24個を搭載している。そして、4入力LUT換算で23万から53万個搭載しており、前述のSiliconBlueのラインナップの最大のものよりもさらに1桁大きい集積度である。
そして、次の図に示すように、この高速トランシーバを使うと100Gbpsの高速のラインカードというハイテク製品も作れてしまうと言う。
また、Altera社はハイエンドのStratix IVだけではなく、ローコスト、低消費電力のArria IIという製品も持っている。Arria II FXは、4入力LUT換算で1万6,000個から25万6,000個を集積し、3.125Gbpsの高速トランシーバを4~16個搭載している。このシリーズはエントリ価格が15ドルとなっている。
なお、ArriaはハイエンドのStratixと比較すると低消費電力であるが、 SiliconBlueのiCE65シリーズと比較すると圧倒的に高性能であるが、消費電力も1桁以上違い、用途が異なる。
XilinxのVirtex-6とSpartan-6
業界最大手のXilinxの新製品が40nmプロセスで製造されるVirtex-6と45nmプロセスを使うローコストのSpartan-6である。
Virtex-6は前世代のVirtex-5と比較するとロジックは15%速くなり、DDR3のサポートなどで汎用I/Oのバンド幅は33%増加、高速トランシーバのバンド幅は86%増加しているという。そしてXilinxは基本のロジックブロックとして6入力LUTを採用している。
この6入力LUTはそのままで複雑な論理が作れるだけでなく、分割して2つの出力を出すことも可能であり、Xilinxは、4入力LUTよりも一定の論理を実現するのに必要なチップ面積が少なくてすむと主張している。なお、この6入力LUTはVirtex-5から採用されている。
そして、XilinxのRAMマクロは36Kbitで18Kbit 2個に分割して使用することも出来るし、アドレスコントローラを内蔵しておりFIFOとしても使用できるようになっている。
高速トランシーバに関しては、GTHシリーズでは11.2Gbpsのトランシーバが搭載され、AlteraのStratix IV GTと張り合っている。なお、Virtex-5では組み込み用のPowerPC 440コアのマクロがあったが、何故か、Veirtex-6ではPowerPC 440マクロは無くなってしまい、マイクロコントローラはFPGAで作れるソフトマクロのMicroBlazeだけになってしまった。
また、ローコストのSpartan-6もDDR3メモリコントローラや3.125Gbpsのトランシーバを搭載する。ただし、DDR3の場合、各メモリコントローラに接続できるDDR3チップは1個で、DIMMは接続できないという制約がある。
なお、この発表を行ったAlfke氏はXilinxの多くのアプリケーションノートを執筆しており、同社のFPGAのユーザであれば、例外なく同氏のアプリケーションノートを読んで勉強したという有名人であるが、講演の最後で、翌週にはリタイアして同社を去ると発表し、会場から盛大な拍手が贈られた。