実在の人物をモデルに製作された映画『クヒオ大佐』(吉田大八監督)の特別試写会が、4日に都内で行われ、主演の堺雅人、松雪泰子が登壇した。
クヒオ大佐とは、かつて日本に実在した結婚詐欺師で、「父はカメハメハ大王の末裔。母はエリザベス女王の妹の夫のいとこ」などとデタラメを並べ立てては、女性たちから推定1億円以上を騙し取ったとされる人物。クヒオを演じた堺は、「結婚詐欺師なので悪人ではあるものの、純真といえば純真な男。日本人なのにアメリカ人のふりをする設定で、片言の日本語の演技を頑張ろうと思ったんですよ。でもあまりの難しさに、途中でどうでもいいやという気持ちになってしまって」と苦笑い。実際には監督の指示を受けて演技に臨んだそうで、「だから役作りというほどの役作りはしていなくて。腕立て伏せの練習をしたくらいですね(笑)」。
自虐的に語る堺とは対照的に、クヒオに騙されながらも献身的に尽くす女性を演じた松雪は、堺の演技を「俳優として、すごくたくさんの引き出しを持っているんですよ。今回はとくに技巧的というか、監督の細かい演出を受けてクヒオの話す言葉や動きを巧みに演じていて、圧倒されました」と絶賛。観客からも納得の拍手が起こる中、堺は照れ笑いを浮かべながら、「クヒオもいろいろな技を駆使しながら女性と接していたと思うし、彼を演じる僕にも、技という点で多くのものが要求されていたと思います」と述べた。
ストーリーにちなみ、MCから「身の回りで騙されてしまった人は?」と聞かれると、「たぶん僕自身が一番騙されやすいんじゃないかな」と堺。普段から人の話を疑わない傾向があるそうで、「謙遜のつもりで『演技が苦手なんですよ』と言われたら、『そうか。この人は本当に演技が苦手なんだな』と思ってしまうタイプ(笑)。だから僕の前ではあんまり謙遜しないほうがいいかも……」。
一方の松雪は、「クヒオみたいなタイプの男性に騙されている女性を見かけたことがあるんですよ。もちろん『あの人はやめたほうがいいよ』と、やんわり伝えておきました」とカミングアウト。ただし稀代の詐欺師であるクヒオ大佐に関しては、「実際にクヒオが現れて騙してこようとしたら、騙されているふりをして、どんな技を繰り出してくるか検証してみたい」と興味津々の様子だった。
『クヒオ大佐』は、10月10日より渋谷シネクイント、新宿バルト9ほか全国公開。