Windows OSの進化と共に、かならずバージョンを上げててくる付属ソフトウェアは少なくない。本稿でとりあげるWindows Media Player(以下、WMPと略記)もその1つであり、Windows 7では、バージョン12となり、ルック&フィールも含め、大きく変化したソフトウェアの1つである。

本稿では、最新となるWMP 12の新機能を紹介をすることにしたい。しかし、その前に触れておきたいことがある。これまでWMPを標準のメディアプレイヤーとして使ってきたかどうか?である。実は筆者も、長きに渡りWindowsを使用してきたが、WMPを標準プレイヤーとしてきたことは一度もなかった。本稿の執筆で、WMPを起動しようとしたらセットアップ画面が立ち上がったくらいである。なぜ、標準プレイヤーとなりえなかったのであろうか。また、WMP 12の新機能はそれ克服しうるものとなるか、そこから見ていきたい。

Windows Media Playerの歴史

WMPは、1990年のWindows 3.0に搭載された3.0がその最初である。図1は、英語版Windows 3.1に搭載されているWMP 3.1である。

図1 Windows Media Player 3.1

Windowsの進化に合わせ、バージョンを重ねていくが、最も普及が拡大したのはWMP 6.4であろう。外部プログラムからの利用がこともあり、付録コンテンツの再生でよく利用されたことが一因として挙げられる。WMPは、この6.4を境に大きく変貌していく。6.4までは、マルチメディアコンテンツの再生という目的がほとんどであった。しかし、インターネットの普及などで、インターネット上のコンテンツの再生、ストレーミング、さらには音楽CDの取り込み、再生に合わせたビジュアル効果の表示など、WMP 7以降、その姿を含め大きく機能拡張していく。 しかし、その一方で、標準ではDVDビデオの再生ができないといったこともあった。

これは、音声、動画データは何らかの方法で符号化処理(エンコード)されており、再生するにはその処理方法に合わせたデコーダが必要となる(その仕組みや必要なソフトをコーデックと呼ぶ)。Windows Vista以前では、DVDビデオのコーデックであるMPEG-2デコーダがなかったのである。同様のことは、DivXといった動画、さらには動画を格納するコンテナなどについてもあてはまる。つまり、必要に応じて、ユーザーが自身の手でコーデックやソフトウェアをインストールしないとWMPでは再生できないものが存在したのである。さて、これらをまとめると次のようになる。

  • すべてのコンテンツを再生するにはコーデックのインストールが必要
  • WMP 7以降の機能拡張により、動作が重くなってしまった

WMPでは、自動的にコーデックを判定し、必要なソフトウェアをインストールする仕組みもあったが、決して万能ではなかった。さらに初心者にはコーデックの判断は難しく、また複数のコーデックのインストールするとコンフリクト(競合)が発生し、うまく再生できない事態もありえた。一方の動作の重い点については、たとえば、音楽CDの再生だけで、わざわざWMPを起動することもないという理由で、フリーソフトなどで軽快な専用再生ソフトが使われるといったことも少なくなかった。実際に、Windows XPでは、[ファイル名を指定して実行]で「mplayer2」とすると、WMP 6.4が起動する(つまりそういうニーズをマイクロソフトも認めていたのであろう)。

図2 Windows XPで起動するWindows Media Player 6.4

これらの理由から、メディアプレイヤーとして、WMPを以外を使わざろうえないという状況が存在した。実際にフリーソフトウェアでも、WMP 6.4を模したMedia Player Classicという汎用なプレイヤーが存在する。

図3 Media Player Classic

標準メディアプレイヤーとしてのWidnows Media Player 12

まずは、WMP 12の強化ポイントは以下である。

  • MPEG-4、AAC、AVC/H.264などのコーデックのサポート
  • DVD再生機能の強化
  • 軽量再生モード

MPEG-4やAVC/H.264は、最新の動画圧縮コーデックであり、デジタルカメラやBlu-Rayディスクなどでも使われるものである。これに対応したことで、最近のほとんどの動画をそのままで再生できるようになった。DVD再生も自動的に全画面で行うことができる。そして、最後の軽量再生モードであるが、これは実際にいくつかの画面を見ていきたい。WMP 12を起動すると、たいていは、図4もしくは図5のようにライブラリが表示され、再生リストやコンテンツが表示される。

図4 ライブラリ、再生リストの表示

図5 ライブラリ、ビデオの表示

実際に再生すると図6のようになる。

図6 動画再生中

これだけでも非常にシンプルなデザインとなったことに気がつくであろう。必要最低限のボタンが配置される。ウィンドウサイズは、動画サイズに合わせられる。そして、しばらく時間が経過すると、図6内に表示されている操作ボタンなども消える(図7)。

図7 一定時間が経過すると操作ボタンも消える

全画面モードへの移行は、図6で右下の斜めの矢印のボタンをクリックするか、[Alt]+[Enter]キーを押す。ライブラリへの移行は、画面右上の■が3つのボタンをクリックする。また、再生中にWMP 12をタスクバーに移動すると、図8のようになる。

図8 Windows Media Player 12をタスクバーに移動

サムネイル上にマウスポインタを移動すると、タイトルなどが表示される。また、操作ボタンも用意されており、再生・停止、スキップなどの基本的な操作も行うことができる。

ライブラリとプレイビューが別画面に

これまでの、WMP 11では同じフレーム内にプレイビューとライブラリが同じウィンドウサイズで表示されていた。そのため、解像度の小さな動画(携帯端末や携帯プレーヤ用の動画を確認することもあるだろう)を再生した後、ライブラリを起動すると、図9のような表示になってしまうことがあった。

図9 小さなウィンドウサイズでライブラリを表示

正直、いちいちウィンドウサイズを変更するもの手間であった。WMP 12では、ライブラリとプレイビューはまったく別のウィンドウで管理される。プレイビューのサイズと無関係にライブラリが表示され、サイズも記憶される。

iTunesのライブラリも自動的に読み込み

もう1つ便利に感じた機能を紹介しよう。iPodを使用するユーザーならば、iTunesをインストールしていると思う。iTunesでは独自の方法で、音楽データが管理される。WMP 12では、iTunesのライブラリが利用できる。図10のように、iTunesに音楽CDから取り込みを行う。

図10 iTunesで音楽データを取り込み

その後、WMP 12を起動すると、iTunesに取り込んだ音楽データがライブラリに登録されている。

図11 Windows Media Player 12でiTunesのデータが利用可能

普段は、iTunesから操作を行うことがほとんかもしれない。しかし、WMP 12でも操作できるようになることで、ちょっと便利な使い方もできるであろう。

さて、これまではWMPは、あまり使ってこなかったという人も少なくないであろう。しかし、今回の機能強化により、標準のメディアプレーヤーとしてかなり使い勝手がよくなったといえよう。さらに軽いというのもありがたい。ぜひ、Windows 7をインストールしたら試してみていただきたい。