東京急行電鉄とカーシェアリング・ジャパンは29日、東京・渋谷のセルリアンタワーで「EVカーシェアリング」を公開した。1台の自動車を複数の会員が共同で利用するカーシェアリングは、複数の企業が全国エリアで展開しているが、今回、2社は、カーシェアリング用のクルマに電気自動車(EV)を投入するという初めての試みを披露した。
EVカーシェアリングは、東急セルリアンタワーが管理・運営するセルリアンタワーの地下3階にある駐車場の一部にハセテック製の電気自動車用急速充電器を設置し、富士重工業製のスバル「プラグイン ステラ」を1台導入し、電気自動車のカーシェアリングを展開するというもの。
カーシェアリング先進国・スイスや、その他のヨーロッパ諸国で積極的に推進されている、鉄道事業者とカーシェアリング事業者の提携によるカーシェアリング・プロジェクトが日本でもいよいよ広がりそうだ。その第一弾となるのが、東急電鉄とカーシェアリング・ジャパンがタッグを組んだ「EVカーシェアリング」というわけだ。
今回、セルリアンタワー地下3階の一角に、スバル「プラグイン ステラ」2台(1台はEVカーシェアリング用、もう1台はデモ走行用)と、従来からあるカーシェアリング用のトヨタ「プリウス」が公開され、利用手順などの説明が行われた。
東京23区を中心に56ステーション、67台でカーシェアリング事業を展開するカーシェアリング・ジャパンのウリは以下の通り。
- 会員登録したユーザーは、パソコンや携帯電話で利用したい時間・場所でカーシェアリングを予約
- 入会金4980円、月額基本料金1980円が必要。利用時は時間料金30分590円~、距離料金1km13円~などがかかる
- ガソリン代や保険料は無料。クルマを所有するよりも維持費が不要なのでリーズナブル
同社は2000ccクラスのクルマを所有するよりも、カーシェアリングを利用するほうが、週末3時間ほどの利用頻度で年間80万円も経済的だとPRする。「一般的に、個人ユーザーが電気自動車を利用する機会はほとんどない。そこで、こうしたカーシェアリングを利用することでEVを体験してもらうことが第一の目的。そして、新しいモビリティとしてのEVを他社に先駆けて導入することで、既存のサービスの拡充をしていきたいという狙いがある」
では、実際に電気自動車スバル「プラグイン ステラ」を利用するまでを追っていこう。まずは、カーシェアリング・ジャパンの会員登録と「EV研修」なる講習会を済ませたユーザー(カレコ会員)は、パソコンや携帯電話からカーシェアリング・ジャパンの「カレコ」サイトにアクセス。開始時間・終了時間・希望エリア・希望車種などを入力し、予約へ。そこまでおよそ5分もあれば完了する。
実際にクルマが置いてあるセルリアンタワー地下3階へ向かい、スバル「プラグイン ステラ」の前で、携帯電話で「カレコ」サイトへアクセスしたのち、画面上の「利用開始」のボタンを押すと、約5秒ほどでステラのドア・ロックが開錠する。ドアを開け、ダッシュボード付近にあるキーボックスからキーを取り出して始動! これで終わり。通常のクルマと異なる作業は一切ない。ただ、利用終了時に急速充電器への接続を行う必要がある。接続については、セルフのガソリンスタンドの利用とほぼ同じ。料金は一切発生しないからそのぶん手間は少なく、充電口(キャップ)を開け、プラグを差し込んで「充電開始」のボタンを押すだけだ。
このEVカーシェアリング、カーシェアリング・ジャパンによると、採算性は度外視で、まずは電気自動車に対するユーザーの興味をかき立てて、新たな会員獲得のためのきっかけづくりとしてどこよりも先に導入したという。同社に出資する三井物産は、「この事業をプラットフォームとして次なる事業に取り組んでいきたい。情報産業分野、エネルギー産業分野などとのシナジー効果も期待できる。『ラーメンからスペースシャトルまで』と言われる三井物産が総力を挙げて、これらを生かした新たな取り組みに挑戦していきたい。例えば、カーナビなどは今後積極的に取り組んでいきたい事業のひとつだ」と語る。
さて気になるEVカーシェアリングの料金だが、こちらは2010年3月までキャンペーン料金で提供される。距離料金なしの30分700円、6時間パック7000円などでスバル「プラグインステラ」をドライブできる。