カタ破りをカタチに――。昨年10月の経営統合による設立以来、掲げた企業ビジョンを実現すべく、JVC・ケンウッド・ホールディングスは、オーディオ、ビデオ、通信を融合したHome AVC「RYOMA(リョーマ)」を発表。30日、都内にて開発発表会を行った。
デジタル・ネットワーク時代にふさわしい「カタ破り」な製品を
発表会で登壇した、同社 執行役員常務 前田悟新事業開発センター長は、今回の開発背景にある「AV機器のAV危機」化に言及。価格競争、コモディティ化、空洞化、右にならえ…といった要素を挙げ、「どのメーカーも体力競争になっている」と指摘したうえで、「ユーザーがさらなる低価格化が進むのを待っている」状態となっていることが、"AV危機"という厳しい状況に輪をかけているとした。
ただ、「ゲーム機やiPodといった"手頃な価格"かつ"ユーザーが欲しいと思うもの"にはお金を出しているのも事実」。そんな状況下で必要とされるのは、新しいライフスタイルを提案できる「欠乏感を与える製品」であるとし、その開発が「家電業界の課題になるだろう」と語った。
そこで今回同社が提案するのは、「オーディオ、ビデオ、通信の融合」と「ホームオーディオ新時代」をコンセプトとしたRYOMA。同製品は、ブルーレイディスクレコーダー、HDD、デジタルハイビジョンチューナー、FM/AMチューナー、デジタルアンプを1台に集約して搭載したHome AVC(Audio, Visual and Communication)。「ホームオーディオライフの復活」を大きなテーマとして、「観る」「録る」「聴く」が一体となったRYOMAを展開していくという。
さらに、「ハードの売り切りビジネスからの脱却」のための新規ビジネルモデルとして、新ネットワークサービス「M-LinX(エム‐リンクス)」も発表された。M-LinXでは、難聴取地域でもクリアなラジオ放送が楽しめるだけではなく、音声とは別の付加データを受信できる技術仕様を開発中。コンテンツに関しては、複数のパートナー企業とすでに話を進めており、「今後もパートナー拡大を目指していく」方針だ。
このほか、手持ちのテレビでM-LinXが楽しめるFM/AMチューナー「M-LinX Tuner Box」も発表。RYOMA購入者だけではなく「たくさんの人に楽しんでいただきたい」とし、「部品供給や技術ライセンスなども検討している」と表明。それに対し、資本力のある大手に食われるのではないか?といった質問も出たが、「パテントももっている。他社は簡単には入ってこれないだろう」と自信をみせていた。
現時点ではRYOMAの価格に関して「公表は控える」としながらも、「個人的な希望となるが、現行のレコーダーに少しプラスしたくらいがいい」と話し、"戦略的な価格"で攻めていくことを示唆した。
発表会中に、「日本のメーカーは知恵をもって新しい製品をつくり続けていくことが重要」と繰り返し提言した前田氏。経営統合を契機として「新しい製品をどんどん出し続けていく会社になる」という目標を掲げて歩む同社が投入する新製品が"AV危機"からの脱却の糸口となるのか、来春の製品発表を待ちたい。