ホンダは24日、東京・南青山の本社ビルで、次世代パーソナルモビリティ試作機「U3-X」を公開。セグウェイよりもずっとコンパクトなサイズ、着座して自由自在に動ける電動一輪モビリティで、試作機の技術についてのプレゼンテーションのあと試乗会も行なわれた。10月24日から開催されるよ「第41回東京モーターショー2009」(千葉・幕張メッセ)に出展する予定の「U3-X」に実際に跨ってみた。
次世代パーソナルモビリティ試作機・U3-Xの肝となる部分は、前後左右、斜めと全方向に移動できる世界初(ホンダ調べ)の全方位駆動車輪機構(Honda Omni Traction Drive System = HOT Drive System)と、二足歩行ロボット「ASIMO(アシモ)」のロボティクス研究で培ったバランス制御技術の2つ。1986年から埼玉・和光の本田技術研究所基礎技術研究センターで研究・開発され、「ASIMO」「歩行アシスト」などに続くロボティクス研究のひとつの成果だ。
セグウェイとの大きな違いは、U3-Xはハンドルなどがなく、両手がフリーだということ。屋内の使用を想定して開発されたU3-Xで、片手にグラスなどのモノを携えて移動したり、両手に荷物を抱えて移動するなどの使用シーンも連想できる。両手で抱えられるほどのコンパクトなボディは、部屋に置いても自然に馴染みそうだ。
乗り方もいたってシンプル。着座するさいは、クルマに乗り込むように無造作に着座するわけにはいかない。シートに軽く手をあてながら静かに跨ろう。ここでちょっとコツがいる。乗員が重力に向かってまっすぐに座らないと、微妙に傾斜している方向にスルスル……と動き始めてしまうが、垂直に座ることを意識して跨ると安定して静止する。
動き出したい方向に体重を傾けると、その方向へと発進する。全方位駆動車輪機構(HOT Drive System)によって、体重を傾けた方向に自由に進むことができる。が、若干の違和感を感じるのは、左右へ曲がるとき。クルマやバイクを運転しているときは、旋回する方向にクルマも身体も向かうが、U3-Xは最初に着座したときの方向を保って左右へ移動することになる。つまり"真左""真右"に体重を傾けると、カニの横歩きのように身体は正面に向いたまま左右へスライドする感じなのだ。
この違和感について同社開発担当者は、「クルマの感覚を忘れて乗ってほしい。例えば、すれ違う人を避けるときって、真正面を向いたまま身体だけ左右に移動させるでしょう。つまり歩行空間と同じ感覚で乗ってもらえば早く慣れてくるかもしれない」とアドバイスしてくれた。
さて、このように人の行きたい方向に自由に移動できるホンダ独自の技術のひとつ、全方位駆動車輪機構(HOT Drive System)。スクーターのタイヤよりも一回り小さいぐらいの車輪に、複数の小径車輪を一列につなぎ合わせた構成になっている。前後方向には通常のスクーターのタイヤのように全体が回転し、左右方向には、小さな車輪要素が単体で回転する。この動きが一連となって作用して斜めに移動することができるのだ。
ホンダはこのU3-Xの技術を活かし、「機構・制御などの要素は、2輪・4輪の技術にも応用できるだろう」と話す。市販化の予定はないが、今後の進化が楽しみな1台だ。