インスタントカメラによる記念撮影を再現
カメラマンロボットの"太郎くん"は、モデルロボットの"五郎くん"と1組で大阪万博のフジパンロボット館に出展され、手に持ったポラロイドカメラで来場者の記念写真を撮影した。その数は約半年の会期中に6万5,000枚というから驚く。
ちなみに、当時は大きく立派なカメラボックスを持っていたのだが、夕張ロボット大科学館で展示される際にビデオカメラが取り付けられ、オリジナルのボックスは失われてしまったようだ。
できるだけ製作当初の仕様に近づけることを目標とした修復プロジェクトではあるが、今回の作業では予算もなく、富山での展示までに時間がなかったこともあって、オリジナルのカメラボックスは再現されなかった。しかしポラロイドカメラで撮影という機能面だけでもなんとか再現したいところ。そこで、大阪万博当時と同じポラロイド製のインスタントフィルム使用にこだわってカメラも用意したとか。
ところがこれまた残念なことに、昨年でポラロイド製のフィルムは生産終了となっており、大量の確保は難しいため使用を断念。写真のサイズは小さくなってしまうが、現行製品である富士フィルムの「チェキ」を使用することにしたそうだ。
"チェキ"で自動撮影させる仕組みはシンプルで、カメラ自体には手を加えず、マイコン基板で制御されたサーボモータを使って直接シャッターを押させるというもの。そのために学生たちはモータの軸部分に取り付けた爪がシャッターをうまく押せるような形にカメラを固定するボックスを設計。制御プログラムとともに手早く作り上げた。カメラをボックスに入れ、"太郎くん"に仮取り付け。何度かの調整を行い、無事"チェキ"フィルムでの撮影実験は成功した。
たくさんの来場者の記念写真を撮影することになる富山の実演展示では、さらに細かな調整を経て、完成度の高い状態に仕上がっているはずだ。
修復プロジェクトの今後
今回富山で実演展示される4人以外のロボットは、現状では動作しない。これらも追々修復していきたいそうだが、MANOI企画の岡本氏は、その中でも特に「秀才ロボット シュウくん」をぜひ動くようにしたいと言う。
"シュウくん"は、ラジコン操作で歩行が可能なタイプとして1960年代から数人作られたロボットの1人。筆者の調査では、もともとは「三郎」「富士男」「五郎」のいずれかとして作られたようで、後に統合(?)されたのではないかと推測している。歩行と言っても、いわゆるブリキのオモチャのロボットのように、足裏のローラーを使ってすり足で進むのだが、人間以上の巨体がのっしのっしと歩く様はやはり相当なインパクトがある(と言うのも、おぼろげながら筆者も子どもの頃に歩く相澤ロボットを見た記憶があるのだ)。
現在、日本児童文化研究所で保有する相澤ロボットの中では、歩行タイプはこの"シュウくん"だけ。それだけに他のロボットよりメカニズムも複雑で、動態への修復はもっとも難しい。しかも真空管などはできるだけ製作された当時に近い部品を探し出しての修復となれば、100万円単位の費用が必要になるのは間違いないそうだ。現状では予算がなく、すぐにそうした修復作業に取りかかるのは難しいと言う。
そのため、今後、様々なイベントでロボット達を展示していく際、スタンプロボット"テッちゃん"のスタンプや、カメラマンロボット"太郎くん"の記念写真でカンパを集め、Webサイトやロボット専門誌などで金額を公開した上で修復費用に充てていきたいと考えているそうだ。
ちなみに今回の富山での展示においては、"テッちゃん"のスタンプは無料、"太郎くん"の記念写真撮影は"チェキ"のフィルム代として500円をいただく形になったとのこと。会場に行かれる方は、今後の修復プロジェクトの進展のためにも、ぜひ1枚と言わず何枚か撮影していっていただきたい(笑)。
冒頭で触れた先日の記事でも書いたのだが、筆者は以前から相澤次郎氏とロボットたちの軌跡をまとめるべく資料収集や取材を続けており、今回の修復プロジェクトにもできるだけ協力しつつ、随時追いかけていくつもりだ。当時のメカニズムやその修復の詳細については、またいずれ機会を改めてお伝えできればと思っている。
相澤ロボットに関しては保有者の日本児童文化研究所でも情報を求めているので、当時の思い出や情報などお持ちの方は筆者にご一報いただければ幸いだ。