カシオ計算機 羽村技術センター 時計事業部 モジュール開発部 モジュール企画室 岡本哲史さん

男性用の多機能モデルといえば、「G-SHOCK」をはじめ、そこから派生した高級感溢れるメタル素材を外装に多用する「MR-G」や「MT-G」、「GIEZ」が想起され、カシオが席巻している感がある。

「よりカシオらしい製品を女性向けに、ということで、世界最小(当時)のムーブメントを採用した現行のMSG-300/3000シリーズを開発しました」と岡本さん。また、今回の世界最小記録を自社で打ち破ることとなった新しいムーブメントについては、「およそ一年間かけて方向性を探りながら、女性モデルの企画担当者と相談しながら開発にこぎ着けました」という。

この新型ムーブメントは標準電波を受信、時刻や日付を自動補正する機能を有し、光発電機能まで備える。また、時分秒針に加えて、ストップウォッチのアナログ式針を駆動させることができるという。従来のモジュールでは時分秒針を4つのモーターにより駆動させたが、新型は2つとして省スペース及び従来品の2分の1以下の省電力化を実現したすぐれものだ。

G-msシリーズの中でも、圧倒的な人気を誇るMSG-300(左)とMSG-3000シリーズ。最小ムーブメント搭載により、多機能タイプにおける薄型化が可能となる

さらに岡本さんをはじめとするカシオ開発陣では、電波受信用のアンテナ部にも技術革新を加えた。モジュール外枠のメタル素材からアンテナを離して設置することで受信感度を高め、アンテナ自体の長さも17.3mmと従来品よりも10%ほど短縮。細部では、モーターの駆動システムにも改良が加えられている。

「モジュールの小型化にプライオリティを置きましたが、そうすると例えばソーラー発電するための面積の縮小に伴い電流も小さくなってしまいます。それを補うため省電力化し、文字盤の透過率を改善するような工夫もしています。アンテナ感度を上げるために、ケースのかぶせ方にも工夫を凝らしています。このように、外装を設計する側の協力も得ているわけです。バッテリーは10.25mmサイズから、9.5mmサイズに変更しています」と、詳細についても岡本さんは教えてくれた。

イメージキャラクターをつとめるのは独自のセンスとタフさを兼ね備えた土屋アンナ

上質なメタルテイストが魅力的なG-ms「Octra(オクトラ)」の「MSA-700C-7A2JF」

このようにして完成した世界最小の多針・多機能ムーブメントは、アナログ式の多機能ウォッチ・G-msなどに搭載され、2009年末に全国の百貨店や専門店などで発売される予定だ。オフタイム用として人気の高い「Baby-G」に対して、これから発表される最小ムーブメント搭載の多機能モデルは「カシオらしいスポーティさも備え、オンタイムにもふさわしい"エレガンスでかっこいい"という方向性を目指した」と岡本さんは胸を張る。

現行の多針・多機能モデルG-msシリーズ「MSA-700C-7A2JF」(1分の1秒ストップウォッチ、パワーセービング機能、耐衝撃構造、10気圧防水、3万6.750円)をはじめ、定番人気となったMSG300/3000シリーズがファッション通やOL層といったアクティブな女性たちの間で新たなトレンドを創出しているなか、アナログ式クロノグラフといった多針・多機能ウォッチ分野で先行するカシオ製品の動向について注視したい。