普通の恋愛映画はやってられない

映画に対してとにかく熱い友松監督。ネット上の自作映画批判に対して、自宅住所や携帯電話番号まで公開して実名で反論したエピソードはすでに伝説

――この作品では、ラブコメというか、ベタな「萌え」の要素も強く感じられたのですが……。

友松「それは正々堂々と描きました。とにかく、川村ゆきえさん演じるもなみが、観客に可愛く見えていたら嬉しいですね。『愛してるから死なせない』、『愛してるから死に切れない』という言葉が、吸血少女と少女フランケンそれぞれを表現するコピーなんですが、そんなふたりに愛された男を軸に、血みどろの三角関係を描きたかった。『萌え系に惚れて、最後は下僕となる男』というのも、今回は撮りたかった」

――友松さんは特殊・異常な状況における激しい恋愛をこれまでも描いてきました。

友松「普通の恋愛映画を僕がやっても仕方ないし、つまらなくてやってられないんです。恋愛を描くにしても、もっと精神の歪みとか、殺し合いとかも描かないと……。ゾンビ映画といわれる『STACY ステイシー』も僕にとっては完全に恋愛映画なんです。大好きな女の子がゾンビになった時に、愛情を持ってバラバラにしてあげる。それが恋愛なんです。もちろん今回も恋愛は描きたかったのですが、こんな魅力的な映画タイトルでスプラッタをやらないわけないじゃないですか(笑)」

「萌え」を全面解禁した友松演出により、この映画に登場する女性はとにかくかわいい

邦画界のゴア描写を牽引! 斬新な残酷シーンを見せる

ホラー映画はもちろん、恋愛映画、テレビドラマ、リーバイスのCM、結婚式のビデオなど、その守備範囲は広すぎ! 縦横無尽に特殊効果(残酷効果が多い)を担当する西村監督

――おふたりの関わった作品には、とにかくスプラッタ描写が多いですよね。

友松「恋愛がテーマでも、スプラッタは外せないですね。ただ、僕が脚本で書くスプラッタと現場でいつもスプラッタをやってる西村さんとでは、スプラッタの土台が違う。西村流のセンスが入って、今回のスプラッタは本当にグレードアップしました」

――西村監督のスプラッタ/ゴア表現は、激しいだけでなく斬新ですよね(※今回の劇中でも、「水芸のように血しぶきが飛び散る」、「リンゴの皮が向けるように皮膚が剥がれ頭蓋骨が露出する」など、斬新なスプラッタ描写満載)。

西村「僕にとって、スプラッタ表現は恐怖というよりギャグなんです。だから、一度やった事は飽きちゃうんですよね。毎回、新しい表現がしたいんです。特殊効果や特殊メイクで映画に関わっていると、どの現場でも似たような表現を求められて、飽きちゃうんです」

――今回の作品で、西村監督イチ押しのビジュアル表現は何でしょうか?

西村「吸血少女の自分の血液を利用したブレード状の武器と、クライマックスの少女フランケンの姿ですね。脚本を読む前の段階で、映画の題名だけ聞いてキャラクターを考えて、イラストを描き起したんです」

オープニングから噴水のような血しぶき。女子高生が頭皮を剥かれ頭蓋骨完全露出(画像左)。吸血鬼の武器としては斬新過ぎる自分の血で出来た剣(画像右)

――この作品を観客にどう楽しんで欲しいですか?

西村「この映画はラブコメ萌えスプラッタですからね(笑)。ここまでデタラメに様々なジャンルが融合してる映画は他にないし、観せるターゲットを決めてないところが、逆に楽しめると思います。海外の映画祭での上映時も、手ごたえを感じました」

友松「僕も西村さんも、アイディアやイメージを提案する時に『作品を面白くすること』を一番大事にした。ただの好みやこだわりだけではなく面白さの後ろ盾がないと、お互いを説得できない。共同監督というスタイルは面白さを加速させます。そこを楽しんで欲しい」

西村「ふたりとも作家性みたいな部分じゃなくて、面白い提案しかしてない。それしかない映画です(笑)」

――おふたりの、今後の予定を教えてください。

友松「内田春菊さん原作の作品があと2本続いています。1本は成人映画『闇のまにまに 人妻・彩乃の不貞な妄想』で、もう1本はサイコキラーものです。こちらは、残酷特殊効果を西村さんにお願いする予定です(笑)。後は『STACY』の続編を企画しています」

西村「物凄い数の作品で特殊効果を手掛けているので、そこらへんの宣伝するときりがないので……。僕自身の監督予定作品は『女子高生がゾンビを轢き殺していく』という感じの映画です(笑)。とにかく面白い映画が撮りたいですね」

『吸血少女対少女フランケン』は大阪 シネマート心斎橋(公開中)、名古屋 シネマスコーレ(10月3日~)ほか、全国順次公開中。なお、9月19日には、大阪 シネマート心斎橋にて、川村ゆきえ、友松直之監督、西村喜廣監督の舞台挨拶を予定。詳細はオフィシャルサイトにて。

(C) 2009 PONYCANYON/Concept Films

撮影:石井健