東京証券取引所が9月1日、インターネット上で有価証券オプション取引を疑似体験できる「有価証券オプションシミュレーター」を公開した。株などのオプション取引について理解を深めるためのもので、東証ホームページから無料で利用できる。

有価証券オプションシミュレーター

かく言う私も、オプション取引に魅力を感じながらも、敷居の高さを感じてなかなか始められない投資家の一人。知人から、このシミュレーターを教えてもらったので、さっそく試してみることにした。

その前に「有価証券オプション取引」について、簡単に説明をしておこう。有価証券オプション取引とは、株などを決められた期日内に、一定の価格で「売る権利」と「買う権利」を売買する取引のことだ。例えば、1週間後にA社の株を1000円で買う権利を購入する。1週間後にA社の株が1,100円に上がっていても1,000円で買えるので儲けがでるというわけだ。900円になっていたら、買う権利を使わなければいい。

この説明を聞いて「うーん、よくわからない」「それは知っているけど、イメージがつかない……」という方は、このシミュレーターの対象者。説明だけではわからないという人(つまり私)でも、理解できるように作られていたので、今は「よくわからないけど、使ってみればわかるかも」という感じで十分。この記事では「有価証券オプション取引について」ではなく、シミュレーターの使い勝手や、どうやって理解させてくれるのかという視点で紹介したいと思う。

複雑なオプション取引をゲーム感覚で。15分でほとんどの取引を疑似体験

まずはお約束のメールアドレスやニックネームを登録し、シミュレーションソフトのインストールを済ませると、さっそくシミュレーションを始められる。5つの練習シナリオがあり、シナリオ1から5になるにつれて難しくなるので、初心者は1から始めるのがいいだろう。オプション取引の仕組みを理解している方は、シナリオ2もしくはそれ以降のシナリオでもいい。

初心者ならシナリオ1から始めよう

シナリオを選択すると、取引シミュレーション画面が表示される。この時点では、いきなり難しそうな数字や表が出てくるので「ウッ」となるが、大丈夫。シナリオ1では、スタートボタンを押せば、「【操作説明】ここをクリックしてください」→「次に進む」→「【操作説明】売買可能な銘柄を確認しましょう」→「次に進む」といった指示を次々としてくれる。ユーザーは"わけもわからず"クリックしていけば、何をどうすればいいのかを順々に説明を受けられるというわけだ。

クリックしていけば、順を追って説明を受けられる

初めての人には、「コール(買う権利)」や「プット(売る権利)」、「権利行使価格」などわからない用語も出てくると思うが、あとで説明されるので、最初は気にせず先に進もう。また途中、難しい用語には説明ページへのリンクがあるので、そこでも確認できる。

シナリオ1は、アロエ製薬という会社の株を題材にシナリオとシミュレーション上の日付が進み、開始5分後には、指示に従ってコール注文の「新規・買い」と、利益が出た場合の「返済・売り」が体験できている。次はプット注文の「新規・売り」と進み、最後は、画面上に表示(配信)される疑似ニュースを見ながら、株価の動きを自分の裁量で予想し、売買を行う。

指示に従ってコール注文の「新規・買い」を体験

利益が出た場合の「返済・売り」

売り買いをしながら、1週間のシナリオを約10分から15分で疑似体験。「値洗い」「SQ」といった用語や、それがどう影響を与えるのか、そして、証拠金不足などのリスクについてもこの流れの中で理解することができる。もちろん、「コール買い」を「プット返済」をどういったタイミングで判断するのか、といった具体的な内容を説明してくれる場面も用意されている。

1週間のシナリオを約10分から15分で疑似体験

様々な条件でのシナリオを用意。資金不足などのリスクもきちんと説明

シナリオ2以降は、指示はほとんどなく、疑似ニュースを見ながら、自分で予想、売買を進めていく。シナリオ1が終わったら、理解度に応じてシナリオ2に進んでもいいし、基礎をもっと理解したいと思う場合はシナリオ1を繰り返すのもいいだろう。

各シナリオにはテーマがあり、シナリオ2は、オプション取引の基本となる「コール買い」について、シナリオ3は「下げ相場での利益の出し方」、シナリオ4は「オプション売り」、シナリオ5は「自由売買」と各テーマをより深く学べる。ユーザーの判断や操作にかける時間によるが、シナリオ2であれば初心者は15分程度。シナリオが進むにつれ、選択肢が複雑かつ長期間のシミュレーションになりシナリオ5だと30分くらいかかる。

オプション取引の基本となる「コール買い」

シナリオ5は「自由売買」と各テーマをより深く学べる

私がやった結果、最初は特に大きな損を出してしまったが、2、3回繰り返すと、利益を出して終わることもできるようになった。このシミュレーターは使い勝手や、利益をどう出すのかということを理解する面でも役に立つが、それだけでなく、資金不足などオプション取引のリスクをしっかりと理解できる。現物株の取引よりも、頭に入れておくべきリスクが多いので、理解不足から予想外の大きな損失を負ってしまったという事態にならないためにも、実取引を行う前にやっておく価値があると思えるものだった。

最初は特に大きな損を出してしまったが、2、3回繰り返すと、利益を出して終わることもできるように