日立アプライアンスは10日、大容量冷蔵庫「フロストリサイクル冷却 真空チルドS」シリーズを発表した。価格はオープン。市場予想価格は、616リットル、最高機種のR-Z6200が35万円前後、以下、R-Z5700が32万円前後、R-SF62ZMが32万円前後、R-SF57ZMが29万円前後、R-SF52ZMが27万円前後、R-SF48ZMが25万円前後。前機種と比べて、約1万円程度、想定売価が上がると予想している。
昨年からの経済危機により、消費者の家電製品に対する選択眼は厳しさを増している。その中、同社は、2009年プレミアム戦略、「納得できる価値」の提供を掲げた。同社の調査によると、必要なものしか買わない、出費は控えたい、という消費者心理か強まっているが、一方で、「よいものを賢く選択したい」「ムダは省くがゆとりは感じたい」「健康・安全に暮らしたい」という声は依然根強くあるという。そこで、同社は納得、共感すれば消費者は購入すると考え、「納得できる価値」を提供することを製品開発の基本的コンセプトとして決定。これが2009年プレミアム戦略の骨子で、冷蔵庫では具体的に省エネと使い勝手を向上させる点に注力したという。とくに、省エネ効果では、業界初、霜を冷却に利用する「フロントリサイクル冷却」を搭載し、これまでになかった、全く新しい省エネ方式を実現させている。
今回発表した冷蔵庫は、「フロストリサイクル冷却 真空チルドS」シリーズ6機種。9月29日から順次発売となる。従来製品から大きく変わった点は3つ。第一は「真空チルドS(セレクト)」。「真空チルドルーム」とは、ルーム内を約0.8気圧の真空状態とすることで、食品に含まれる栄養素の酸化を抑え、保存性を高める機能だ。「真空チルド」は+1℃に設定されており、野菜などの栄養素や鮮度を維持したい食品の参加を抑制する。モロヘイヤで実験したところ、ビタミンE残存量が冷蔵室と比べて約22%アップした。ただし、肉や魚などの保存は、+1℃よりも-1℃のほうが適している。とはいえ、真空チルドルーム内の温度を-1℃に設定すると、野菜や水分を多く含む食品は凍ってしまう。そこで、今回の「真空チルドS(セレクト)」は、+1℃の「真空チルド」と-1℃の「真空氷温」を選べるようになっている。
第二の機能は、先に触れた「フロントリサイクル冷却」。冷蔵庫は冷却を続けると、冷却器に霜が付着する。従来機種では霜による冷却能力低下を防ぐため、ヒーターで霜を解かして除去していた。しかし、この方法だと、霜の冷却エネルギーを捨ててしまうことになり、もったいないことに気づく。そこで、今回の製品では、霜から生じる冷気を有効利用し、冷蔵室と野菜室に送り込む構造を新たに採用した。通常庫内を冷却する際にはコンプレッサーを稼働させる。今回の「フロストリサイクル冷却」は、コンプレッサーを止めた状態でも、霜から生じた冷気による冷却ができるようにした。そうすることで、消費電力量を削減させるというものだ。加えて、独自の「フレックス真空断熱材」も継続採用し、さらに省エネを向上。これらにより、R-Z5700とR-SF57ZMの2機種では、565Lという大容量ながら、年間消費電力量330kWh/年を実現した。
「フロストリサイクル冷却」は、冷気に含まれた水分により、食品の乾燥を抑えることも可能だ。冷蔵室での保存の場合、従来機種と比べ、スライスハムでは約8%、スライスチーズでは約4%、水分保持率がアップ。これまで、冷蔵庫の中に入れておくと、端がめくれ上がるハムも、しっとりと潤いを保っている。
三番目の特徴は「大容量化」。内容積を616Lに拡大し、冷蔵室でのゆとりある収納を実現(R-Z6200、R-SF62ZM)させた。とくに、R-Z6200とR-SF62ZMの2機種では、内容積を従来に比べ14L大きい616Lとした。これにより、冷蔵室の棚の奥行を従来比で約4cm大きい約45.5cmに広げ、大皿や鍋などが余裕をもって収納できるようにしている。冷蔵庫内を有効活用できるよう、冷蔵室には最上段の棚が手前下方に引き出せる「下がって届くん棚」や、簡単に位置を変更できる「らく変えポケット」などを従来から引き続き採用している。
このほかの新機能としては、触れるだけで操作できる「ガラスタッチ式操作部」がある。こちらは、操作部がボタンのような凹凸がなく、表面が平らになっている。操作は軽く触れるだけでよく、フラットなので掃除しやすいというメリットもある。
また、従来から搭載されているスイッチを押すだけで引き出しが出てくる「電動引き出し」や、美しく傷つきにくい「クリスタルドア」などの機能がある。これらにより、省エネ、使い勝手の面でレベルアップさせ、「納得できる価値」の提供を図ったとしている。日立アプライアンス 常務取締役 石井吉太郎氏によると、現在、日立では501リットル以上の大型冷蔵庫のシェアは約33%。今後は40%以上を目指したいと意欲をみせる。
常務取締役 石井吉太郎氏。2009年プレミアム戦略を解説 |
生活家電研究部 河井良二氏。フロストリサイクル冷却は冷蔵室、冷凍室と温度の異なるものを霜で冷却するところに苦労があったと語る |