日本総研調査部 マクロ経済研究センターは8日、「米国住宅市場の底打ちは本物か? ~最悪期は脱するも、本格回復は依然展望できず~」と題したレポートを公表した。
レポートによると、米国での7月の中古住宅販売は07年8月以来の水準を回復するなど、住宅需要に持ち直しの動きを見せている。ただし、住宅価格の騰落に8カ月程度の先行性を有する中古住宅在庫率(在庫/販売、月数)は9.4カ月と高止まりが持続。S&Pケースシラー住宅価格(20都市)は前年比の下落ペースが鈍化しつつあるものの、住宅価格の前年比プラス転換の分岐点が、在庫率7カ月前後であることを踏まえると、住宅価格の上昇転換には程遠い情勢だという。
また、中古住宅在庫率の高止まりの背景には住宅供給の増加があると指摘。今年春以降、住宅販売の増加に伴い所有権移転が増加するなど、差押物件の処分が進捗する一方で、その前段階となる競売通知物件は昨年末以降一段と増加。失業率の上昇に伴い、住宅ローンの延滞・差し押さえは今後もプライム層を中心に一段と増加する見通しで、中古住宅供給の増加は容易には歯止めがかからないと予想される。
需要面でも、政府支援策が11月末に期限切れとなるなか、先細りが懸念される状況。2009年4~6月期における住宅販売の理論値は年率558万戸ながら、累積ベースでは依然として200万戸程度需要が先食いされているとみられ、今後3~4年は販売が理論値を下回る状態が続く見込み。加えて、失業率の一段の上昇により、同理論値は先行き年率500万戸前後まで低下する公算だ。
以上を踏まえ、レポートでは「失業率が低下、所得が持続的な増加に転じない限り、先行き年率500万戸を大幅に超える販売の定着は期待薄で、住宅市場の需給改善、および住宅価格の上昇は当面見込めず」と分析している。