両社が取り組む提携の領域は、優先順位から言うと、「日本企業の海外進出支援」、「外資系企業の日本進出支援」、「次世代ITサービスを共同開発し、日本の新規市場の開拓」となる。両社が提携することで、ITHDの顧客が海外進出する際はBTのインフラやサービスを利用でき、また、BTの顧客が日本進出する際はITHDのネットワークサービスやデータセンターを利用できるようになる。

こうしたグローバル企業の基幹システムのワールドワイドでの展開は、「グローバル戦略ソーシング」に従って行われる。その具体的なソリューションには、「基幹ERP導入ユーザー向け国際マイグレーション支援」や「グローバルデータセンターサービス」がある。

黛氏は、「ERPのバージョンをグローバルで揃えるだけでも一苦労」と指摘する。会計基準など、国ごとに規則が異なるため、一企業でコンプライアンスを満たした形でERPのバージョンを統一するのは非常に手間がかかって厄介だそうだ。

また、「データセンターサービスでは両社の強みを発揮できる」と、同氏は自信を見せる。BTは、仮想化されたデータセンター、VDC(Virtual Data Center)を所有しており、VDCを用いたサービスを提供している。

同社がVDCを用いて提供しているエンタープライズ・クラウドサービスは、管理されている点を特徴とする。例えば、同社のVDCを構成するデータセンターは英国、米国、ヨーロッパ、南米に配置されているが、VDCのユーザー企業は自社のデータがどのデータセンターに配置されているのかを知ることができる。

一般に、クラウドサービスではユーザーはデータの配置場所を知らない。しかし、BTは企業が利用する以上、クラウドサービスといえどデータの管理はされている必要があると考えているそうだ。加えて、同社はもともとキャリアであるため、データセンター間をギガビットEthernetでつないでおり、高速接続が実現されている。

一方ITHDは、日本・アジアの主要都市にデータセンターを所有している。今年5月には東京・御殿山に2万平米のデータセンターを構築することを発表しており(2011年4月開業予定)、データセンターへの投資に意欲的だ。

このような2社のデータセンターを活用して、国内外に点在する顧客のICT環境をグローバルでワンストップのサービスを提供していくという。「グローバルかつワンストップでサービスを提供できるベンダーはそうそうないのではないか」と、同氏はアピールする。

将来は、ITHDのデータセンターとBTのデータセンターとを相互接続して、グローバルなVDCを展開することを構想しているそうだ。そこで、ウリにしたいのが「サービスのクオリティの高さ」だ。BTは自社の特性を生かし、データセンターサービスについても電話と同等のサービスレベルを確保しているそうだ。「BTが提供するデータサービスは世界のどこでも同じレベル。どこを切っても同じ顔が出てくる"金太郎飴"のようなサービスとでも言おうか」(黛氏)

ITHDのデータセンターが相互接続することで、今のところ欧米でしか提供されていない高品質のサービスが日本・アジアでも提供可能になるというわけだ。同氏は、「サービスレベルが高いインフラを介して、当社がこれまで提供してきたきめ細かなサポートサービスを提供できるのは、非常に魅力的だ」と語る。

現在、顧客から要望を受ける形で、両社による販売活動はスタートしている。同氏は、「今までなかったサービスということで、顧客が進んで耳を傾けてくれる」と、提携によるビジネスに手ごたえを感じ始めているようだ。現在は両社による新たなソリューションも開発中ということで、今後の発表を期待したい。