長年、個人の投資活動にアドバイスをし続けているシンクタンク・ソフィアバンク副代表の藤沢久美さん。テレビの経済キャスターとして、政府の審議委員として、大学での講師として、と多くの顔を持ち、大活躍のビジネスウーマンだが、大のMacファンとしても知られる。仕事で使い慣れていたWindowsから買い替えてまでMacユーザーになったという藤沢さんのMac活用術について伺った。

――毎日、ほとんど事務所にいることはなく、国内外のご出張に飛び回られていらっしゃいますね。

藤沢 : そうですね。どうしても出張が多くなってしまっていますね。その一つは、私のライフワークが、リーダー、特に社長さんに数多くお会いして、お話を聞かせていただくことだからです。世の中の常識そのものが、思考停止した状態にあると感じることが多い昨今。そんな時こそ、現場に行って活躍している方に生の声を伺い、そこから真実を自分で探っていくのが一番です。

世の中には、ひとつの事実があれば、それには、必ず光と影と言いますか、いろいろな側面があります。そうした声を聞き、確認し、世の中の進んでいく方向を見ながら、それを投資に活かせればと考えています。伺ったお話は、毎週ネットラジオ『藤沢久美の社長トーク』という形で発信しています。Macユーザーの私だからというわけではありませんが、iTunesで聞くことができます。ポッドキャストにおとせますし、聞き逃した人向けにCDも発売しています。おかげさまで1週間に20万人以上の人に聞いてもらっています。

「藤沢久美の社長トーク」

――iTunesはかなり愛用されているのですか?

藤沢 : それはもう(笑)。現在使っているiPodは、5台目になります。音楽はほとんどiTunesからiPodにダウンロードして聞いています。

聞きたい曲をすぐに選んでダウンロードできる生活を体験すると、もうショップに買いに行くスタイルには戻れませんね。最近は、ITunes-Uにアクセスして、海外の大学の授業を家にいながら聴講しています。この間も、コロンビア大学でのビル・ゲイツの講座を見ました。こんな風に海外に行ったり、留学したりしなくても、世界中の講座がすぐにダウンロードできるというのも、信じられない変化ですね。

――PCもMacをお使いだそうですね。

藤沢 : iPodを愛用するうちに、仕事で使うPCもWindowsからMacに換えてしまいました。1年半前ですか。MacBook Airが出たとき、「もう我慢できない!」と思って、買い換えました。何しろ、あのスマートなデザインがたまらなく使いたくなる魅力がありますし、今までWindowsで使っていたWord / Excel / PowerPointなどもそのまま使えるんです。みなさんから送られてきたデータも普通に見たり利用したりできますので、その点はまったく問題なかったです。

――Macの使っての魅力ってズバリなんなんでしょう?

藤沢 : 私の場合、iPhoneのヘビーユーザーなので、iPhoneとMacの連動が便利というところが大きいです。机に座っていることが少ないのですが、iPhoneは片時も手放さず持っているといっても過言ではありません。どんな機能も指先でタップ、フリックすれば、すぐできますから、カンタン便利。一番よく使うのはなんと手書きメモ機能。約束の時間、おいしかったメニュー、友人の話で気になったキーワード……なんでもiPhoneにメモして、持ち歩きます。国内外を出歩くことが多いのでスナップを撮ることも多いです。TypePadを使って写真を撮り、『Photogene』(下記)で写真をレタッチして、ブログなどにもすぐアップできます。これをMacのKeynoteに貼りつければ、写真入りの出張報告書ができあがり、ということもできます。

『Photogene』

写真を撮るということでいうと、セッションなどに参加して、その内容が参考になるなというときは、発表ボードなどをiPhoneでスナップ写真に撮って、自分にメールしておくこともあります。外国語ですから、メモするよりは、聞くことに集中したいですからね。こうした画像やPDFなどをMacなら切り張りできるのも便利です。自分用の資料をつくるのに、あのとき撮った写真、いただいた資料のあのグラフなどというように、次々切り張りして、ひとつにまとめるのがカンタンにできます。こんなことできたらいいのにな、ということが実現している感じですね。

――まさにiPhoneをフル活用して、コミュニケーションツールにしていらっしゃるんですね。

藤沢 : MacとiPhoneのよさは、とにかく画像とお友達になれることです。感動したこと、ステキだと思ったことはその場ですぐスナップや動画に記録できます。しかも、その場で編集もカンタンにできますから、メールやブログですぐに発信することもできます。パソコンを立ち上げて、長い文章を書いてそれを保存して……というまどろっこしいストレスはゼロですよ。それが手のひらに乗るiPhoneでも、同じことができてしまうのですから、すごいことです。

私は、自分の幼少時代、両親の結婚式のデータをiPhoneに保存しています。外国語は達者ではないのですが、この画像を外国の人に見せながら、トラディショナルな日本についてお話すると、どんな人ともすぐに打ち解けます。まさに、国境や言葉を超えたコミュニケーションができるんです。

――ついつい画像ソフトのアプリケーションの話ばかり伺ってしまっていますが、他に情報収集や時間の効率化という点ではどんな風にご利用ですか?

藤沢 : Macのよさは、画像に強いところにあるので、ついついそんな話が多くなってしまいますが、私も、移動中などは、普通にiPhoneでGoogleニュースを見ています。株価や経済指標の発表などもそれでチェックしています。読まなければいけない資料をPCからAirSharingを使って取り出して、タクシーのなかで読んでいることもあります。いちいちPCを持ち歩かなくとも、うまく使いこなせば、iPhone 1台で、PCでやっていることは大体のことができます。

――藤沢さんとお話していると、なんだかMacを持っていると、毎日の生活が楽しくなりそうな感じがしますね。

藤沢 : 私は本当にそう思っているんです。最初にお話しましたが、私は、世の中がよい方向にいくように、投資をするべきだと思っています。自分の目で見て、感じて、判断して、その結果、よいと思った会社に投資する。応援した結果、利益を得ることももちろん大切なことではありますが、みんながそういう意識を持つことで、この国も随分変われると思っています。

そんな思いをどんな風に発信していったらいいかと考えると、文章も大事ですが、伝わりやすいのは、生の音であり、映像であるのではないかと思っています。それを実現しようといろいろ工夫していたら、Macに出会ったという感じですね。Webというツールが普段使いになったことでも、随分、発信の幅が広がったし、変わってきましたよね。これからビジネスをしていくうえでも、いかに情報をとっていくかも大事ですが、それ以上にいかに情報を発信していくかにパワーを割くべきだと思います。そこで優秀な助けになるのがMacだと思いますよ。

――今日はどうもありがとうございました。

プロフィール : 藤沢久美

シンクタンク・ソフィアバンク副代表。大学卒業後、国内外の投資運用会社を経て、1996年に日本初の投資信託評価会社を起業。99年売却後、現職にいたる。NHK教育テレビ「21世紀ビジネス塾」のキャスターを務めたほか、個人の投資活動についての取材・講演等に取り組む。金融審議会委員ほか公職も多数。

(聞き手 : 酒井富士子)