Google Voice用iPhoneアプリのApp Store登録が認められていない問題で、Appleが米連邦通信委員会(FCC)の調査質問状への回答を公開した。その中で同社は「Google Voiceアプリケーションを拒否した事実はない」と、多くの報道の指摘を否定している。
この問題は、今年7月にGoogle Voice用iPhoneアプリのApp Storeへの登録申請をAppleが却下したという報道が広がったことから始まった。Google Voiceは固定電話回線や携帯電話回線を統合的にWebで管理するサービスで、通話のルーティングやボイスメール機能などを備える。iPhoneの電話機能やAT&T(米国でiPhoneを販売)の電話サービスと重なる部分があるため、Google Voiceを拒否したApp Storeの承認プロセスは非競争的であるという指摘が出てきた。これを受けてFCCが調査に乗りだし、7月31日に詳細な経緯を確認するための質問状をApple、AT&T、Googleに送付していた。
AT&Tは関与せず、Apple単独で対応
Appleの回答は、同社の目標が「最高のユーザー体験の提供」であるという説明から始まっている。その実現にはハードウエアとソフトウエアが一体となってシームレスに動作する製品設計がカギであるとしている。
FCCからの質問1は「なぜGoogle Voiceアプリと、いくつかの同タイプのアプリを拒否したか?」だ。これに対してAppleは、前述のようにGoogle Voiceアプリの拒否を否定し、「調査継続中である」と答えている。同アプリが承認されていない理由は、iPhoneの電話機能やSMS機能のユーザー体験を低下させる可能性があるためだという。Google Voiceアプリは、iPhoneの通話、SMS、ボイスメールのユーザーインターフェイスをGoogleのものに置き換えてしまう。たとえばビジュアルボイスメールが無効になるため、iPhoneにボイスメールが保存されないことにユーザーがとまどう可能性がある。またGoogle Voiceアプリ導入後に、iPhoneの連絡先のデータがGoogleのサーバに転送される。プライバシー保護という点で、「これらのデータが適切に扱われるという保証をGoogleからまだ得ていない」という。GVDialer / GVDialer Lite、VoiceCentral、GV Mobile / GV Mobile Freeなども、同様の理由で認められていない。
質問2は「Google Voiceなどの拒否についてAT&Tと協議したか?」、質問3は「iPhoneアプリの承認に、AT&Tは関与するか?」だ。Google VoiceについてはAT&Tと協議したことはなく、Appleが単独で対応しているそうだ。2006年にAppleとAT&Tが契約した際に、iPhone上で利用可能なソフトウエアをAT&Tが制限しないことで両社が合意したという。iPhoneアプリ承認の判断はAppleの権限だ。ただしAT&Tのサービス規約を尊重し、セルラーネットワークを利用したVoIPやTVコンテンツ配信などはAT&Tの許可を得ているという。
質問4は「Google Voiceアプリと、Appleがこれまでに承認したVoIPアプリの違いは?」。まずGoogle Voiceのルーティング機能にVoIP技術が用いられている認識はないとした上で、SkypeやiCallなどのVoIPアプリについては「WiFi利用の場合のみ承認」と説明している。
質問5は「App Store登録審査でアプリを拒否する理由」。App Store登録のレビューの目的としてAppleは「プライバシー保護」「未成年の保護」「iPhoneのコア体験の維持」などを挙げている。現在、拒否の理由でもっとも多いのは「バグによる不安定な動作」。そうした問題もレビューチームのコメントを参考に修正され、95%のアプリケーションが申請から14日以内で承認されているそうだ。
現在App Storeの承認プロセスのレビュワーは40人以上。1つのアプリを、少なくとも2人以上のレビュワーがチェックする。またApp Storeエグゼクティブによるレビュー審議会で、レビュープロセスの手続きやポリシーが常に見直されている。オープンから1年が経過したApp Storeには、一週間に約8,500の新アプリの登録申請があり、そのまま承認されるのは80%程度だという。