東京都江東区の森下文化センター内にある「田河水泡 / のらくろ館」で、開館10周年を記念した夏の特別展として、『ゴルゴ13』で知られる巨匠さいとう・たかを氏を支える「さいとう・プロの仕事展」が開催されている。期間は8月30日まで、入場は無料だ。
さいとう・たかを氏の講演会も
森下文化センターの一角を利用して開かれているこの特別展は、70点あまりのパネル展示が中心となっていて、ふだんはなかなか見ることのできない作業風景が写真で垣間見られる。『ゴルゴ13』『鬼平犯科帳』など、マンガをあまり手にしない人でも知っている、さいとう・たかを氏の作品は、さいとう・プロダクションによる分業制というシステムから生まれている。その原稿枚数は、ひと月に200ページに及ぶという。
今回は、制作の舞台裏で使われるシナリオや原稿など、貴重な資料も目にすることができる。また、貸本時代の雑誌なども展示されていて、さいとう・たかを氏のこれまでの活動を俯瞰することができ、その世界を満喫できる。
さらに、最終日の30日には、展示会を記念してさいとう・たかを氏の講演会が開催される(14時~16時 料金1,500円)。受講は先着順となっている。申し込みは、森下文化センター(講演会受付時間:9時~22時)へ。
ゆっくりと楽しみたい「のらくろ」の世界
特別展が目的の人も、ぜひ「田河水泡/のらくろ館」も立ち寄っていただきたい。「のらくろ」も誰もが名前は耳にしたことはある、国民的なマンガ。ある程度の年齢層であれば、その作品にも親しんだことはあるはずだが、詳しくは作品を知らないという人も少なくないだろう。
知っているようで意外と知らなかった田河水泡とのらくろの世界。改めて、その世界に触れてみたい |
森下文化センター前の通りは「高橋のらくろード」として親しまれている。下町風情に、のらくろがぴったりとおさまっていて、こころが和む |
展示室では、田河水泡の生い立ちや、のらくろの作品についてわかりやすく紹介されている。田河水泡は、本所(墨田区)に生まれ、幼い頃をこのあたりで過ごした。漫画家になる前は、前衛芸術家や落語作家の時代もあったという。また、小林富士子という女性と結婚するのだが、富士子は評論家・小林秀雄の妹。これは意外と知らない人もいるのでは。
田河水泡の弟子には、『サザエさん』の長谷川町子をはじめとした漫画家たちがいて、水泡を取り巻く人間関係も展示されていて興味深い。作品の魅力だけではなく、田河水泡の人柄などにも触れることができる。
ところで、『のらくろ』は戦争での中断を経て、1981年に最終回を迎えたのだが、のらくろはどうなったのか? 実は、最後は喫茶店のマスターになったのだった。ご存知でしたか?