木村氏は、企業がワン・カンパニーに成長するために乗り越えるべき課題を3点挙げた。1つは、「組織の一体感の醸成」である。組織の一体感を醸成する上で、「グループ共通の価値観」が不可欠であり、その実現には、価値観に基づく行動規範を明文化するとともに、全社員がそれを共感して実践する仕組みを作る必要がある。価値観を体現できていることを昇格の評価基準に組み入れることも有効だという。
2点目は「現地人材の人材プロセスの整備」である。これまで、日系グローバル企業は現地の経営人材育成は現地の方針に任せることが多く、計画的に行われてこなかったが、今後はそれを行う必要がある。具体的には、管理の対象とすべきキーポジションを明確にし、現地人材の発掘・育成・配置・処遇という人材プロセスを整備することになる。
3点目は「グローバルな視野を持つ経営人材の育成」である。具体的には、国を越えて、人事を行ったり、人的ネットワークを構築したりする必要がある。
「グローバル企業として成功するには、企業の価値観を全社で共有して、それが行動習慣として表れるようになり、これらの上に人材プロセスと戦略プロセスが連動した形で回っているという状況を作り出す必要がある」(木村氏)
プロセス&テクノロジー事業部HCMセクター シニアマネージャーを務める幸前夛加史氏からは、ワン・カンパニーに向けた具体策に関する説明がなされた。そのための同社が提案する人材マネジメントのロードマップは次の図の通りであり、「組織」、「人事(人事管理と人材開発)」、「システム」の3つの要素から構成される。
同氏は、「"価値観の定義"は最初の段階である分権化で行うことが大切であり、グローバルと名が付く対策(グローバルポジション定義・人材キャリアパス・リーダー開発プログラム)は分散化で実施していく。システムへの対策は、分権化と分散化では遠心力を、また、二元化とワン・カンパニーでは求心力を働かせる必要がある」と、各対策のポイントを述べた。
また、グローバルな人事を実施する際は広範な人材・地域を対象とする「見える化」がキーとなるため、システム基盤の整備が重要になる。システム基盤を整備する際のポイントは次の図に示した通りである。「グローバルな人事のためのシステム基盤は段階を追って構築していく必要があり、どこまで先取りするかは企業の選択となる」(幸前氏)
企業にとって最も重要な資産は"ヒト"であることは言うまでもない。当然、どの企業も独自の戦略に基づき人材育成を行っているだろう。しかし、昨今の景気低迷、グローバル化の拡大など、企業を取り巻く状況は日々変化しており、これまでと同じ手を打っているようでは競争に勝ち抜くことは難しいだろう。グローバル化という観点から人材を見た時、今回紹介したアビームコンサルティングの戦略を検討してみてもよいだろう。