小栗旬が最新作『TAJOMARU』で演じる大盗賊「多襄丸」の人生は、筆舌に尽くしがたい裏切りによる哀しみと憤怒に満ちている。室町末期、畠山家の次男として何不自由ない生活を送っていた直光(小栗旬)は将軍義政(萩原健一)の酔狂と、兄・信綱(池内博之)、そして弟のようにかわいがっていた家臣・桜丸(田中圭)による裏切りに遭い家を追われてしまう。
心の底から愛している許嫁・阿古姫(柴本幸)を連れて山中に逃げ込むが、大盗賊の多襄丸(松方弘樹)に襲われて直光は意識を失う。目を覚ました直光が見たものは多襄丸に犯された阿古姫の姿。さらに追い打ちをかけるように阿古姫は「直光を殺してくれたら一緒について行く」と多襄丸に持ちかける。あまりの衝撃に呆然と逃げ出す阿古を見送るも、それを追おうとした多襄丸を手にかけてしまう直光。死にゆく多襄丸は直光に「名を継ぎ、人生を自由に生きてみろ」と浪切の剣を託す。この瞬間、畠山直光は名を捨て、多襄丸として生きていくことを決意する。
壮絶な運命を背負う多襄丸を、渾身の力で演じきった小栗旬のコメントが届いた。
――この役をどのように演じようと思いましたか
小栗「台本ができたのがそれこそクランク・インと同時ぐらいだったから、現場で役を作っていくしかなかったんです。でも、2カ月半東京に帰らず、地方でずっと撮影をする形だったので、すごく集中してできたし、毎日がリアルで。撮影もほぼ順撮りだったから、自分も直光と同じように、壮絶な人生を克服していくような感じがありましたね(笑)」
――松方弘樹さんとの立ち回りは?
小栗「松方さんが僕らぐらいの頃は、まさに時代劇全盛期。毎日刀を振り続けていたそうで、そんな人にかなうわけがないですよね。でも、上手い人が相手だと、こっちも上手く見せてもらえるんです。ここは力を抜いてもいいとか、ここだけキメればカッコよく見えるとか、そういう発見があったのはすごくよかったですね」
――殺陣と言えば、クライマックスの桜丸との戦いの小栗さんはすごい迫力でした
小栗「あの撮影の2日間は、(桜丸を演じた田中)圭を本気で殺してやろうと思って演じていたんです。桜丸は『ダークナイト』のジョーカーのポジション。その殺気を引き出したくて、現場ではオマエにムカついているという態度をとり続けましたね」
――撮影後、緊張の糸が切れたように涙が溢れて止まらなくなったそうですね
小栗「そうなんですよ。『よーい、スタート!』って言われた次の瞬間、気づいたらお風呂に入っていたんです(笑)。で、俺、何をしてるんだろう? と思ったら、悲しくもないのに涙が溢れ出したんです。でも、意識がなくなるほど芝居に没頭できたなんて役者人生が終わってもいいと思えるぐらい幸せなことで。俺も一応役者なんじゃん! みたいな充実感がありました」
『TAJOMARU』は9月12日(土)・13日(日)先行ロードショー / 9月19日(土)公開。
(C)2009「TAJOMARU」製作委員会