作例を交えながら画質を考察してみよう。今回の作例は、絞り優先AE、オートホワイトバランス、スタンダードにてRAW+JPEG撮影し、JPEGデータを掲載している。トータルな印象としては、すっきりとした発色でトーン重視の画作りだ。特にシャドウの拾い方がうまい。ただし、撮影シーンによってはパンチ不足を感じることもあり、必要に応じてビビッドモードに切り替えるといったところだろうか。ホワイトバランスがかすかにクールトーンに傾き、そのおかげで抜けの良い印象を受けた。開放F1.9ではいくぶんシャープネスが甘くなるものの、十分に実用的なレベルだ。暗所では積極的に開放撮影していけるだろう。また、高感度タイプのCCDを搭載したおかげで、高感度撮影時の偽色ノイズが少ない。被写体や好みにもよるが、ISO400は常用域といえそうだ。ただし、ISO100でも若干輝度ノイズが目立つ。けっして嫌味のあるノイズの乗り方ではないが、クリアな画像を得たいときは最低ISO感度のISO64で押さえておこう。
GR DIGITAL IIIは外観とコンセプトが変わらないため、ややもするとマイナーチェンジと思われがちだ。しかし、レンズ、画像処理エンジン、そしてCCDを刷新し、内部的には新たなカメラに生まれ変わっている。冒頭で「変わらずに進化する道を選んだ」と述べたのは、こうした理由からだ。むろん、単に内部の刷新だけで進化というつもりはない。GR DIGITAL IIIは従来機能を引き継ぎつつ、暗所に強いカメラに成長している。それも手ブレ補正機能というデジタルなアプローチではなく、レンズの大口径化というアナログかつトラディショナルな手法で。これこそが、GR DIGITALが"GR"たる由縁だ。常に"カメラ"らしくあること。末尾の数字がいくつになろうとも、GR DIGITALはそうありつづけるだろう。