翌24日朝は、8時30分発のフェリーで渡名喜島に向かった。この島は6月に公開された長澤まさみ主演の映画『群青 愛が沈んだ海の色』のロケ地となったところ。私ごと、沖縄の有人島はほとんど訪れているけれど、この島とはなぜか縁が薄く、今回が初めての訪島となった。

那覇から久米島に向かうフェリー「ニューくめしま」。渡名喜島は那覇と久米島の間にあり、この航路のフェリーが寄港する。写真は「風景メイクアップ」の「鮮やか風景」を「+1」にしたもの

ニューくめしまで那覇の港を出航後すぐ、那覇空港に着陸する飛行機がフェリーの真上を横切った。望遠側にズームしたわけではなく広角寄りで撮影したものなので、それだけ飛行機が近くまできていることがわかるだろう

なにがなんでも晴れてほしかった奄美大島では概ね曇り、帰る前夜は雷雨にまで見舞われた。ところが奄美大島をフェリーで離れ、沖縄に近づいてからは、これでもかというほどのピーカン(古い……)日和。渡名喜島を訪れた24日も、朝から晩まで容赦ない陽射しが降り注いでいた。奄美大島で灼いた顔や腕が、さらにじりじり灼かれていくのがわかる。

夏の快晴の渡名喜島は、抜けるように青い空と碧い海、目を休める緑とどこまでも白い陽の光がビーチに映える、楽園のような光景だ。高コントラストで、そのまま撮影しても十分すぎるほど美しいのだが、EX-H10には風景をより美しく仕上げるという「風景メイクアップ」機能が搭載されている。同機能には「鮮やか風景」と「もや除去」の2モードが用意され、前者はたとえば風景の色彩を鮮やかにしたいときや色味を強調したいとき、後者はどんよりした天気の下でぼんやりした景色をクッキリさせたいときに力になってくれる。

渡名喜島の港に入港中。「風景メイクアップ」の「鮮やか風景」を「+1」にしているので、もともと鮮やかでコントラストが高い渡名喜島の夏の景色はやや絵画的な色合いになった

渡名喜島のフェリーターミナル(といっても小さな建物)内にある食堂ののぼり。とにかく暑かったので「生ビール」の文字はなんとも魅力的だった

島のメインストリート(村道1号線)沿いにある「ふくぎ食堂」。昔ながらの赤瓦民家を活用したもので雰囲気がよい。中には映画『群青』の出演者・スタッフのサインが飾られていた

鹿児島を出航して以降、船の上でも、曇りがちだった奄美大島でも同モードをいろいろと試し、とくにぼんやりした写真にメリハリを与える「もや除去」は風景写真で有効に働くケースが多いと感じていた。渡名喜島でも、「鮮やか風景」を使うとまた趣の異なる強烈な写真が出来上がり、おもしろかった。

25日、那覇に戻る。この日も朝から暑かったので、午後は映画を見にいった。夕方からは例によって「さかえ」で呑んで、夜8時頃に店を出る。そのまま那覇空港に直行し、羽田行きの最終便で東京に帰った。

皆既日食を最大の目的とした6日間の旅は、これにてひとまず終了。この間、500枚を超す写真を撮影したものの、「EX-H10」のバッテリー残量表示は、まだフルのままだった。1,000枚撮れるんだから、そりゃそうか。

風が強いため、家々は防風用の樹木であるフクギに囲まれ、道路面より低く掘り下げられた土地に建てられているのが特徴。フクギは村の木にも指定されている。なお、渡名喜島の人口は480人ほどだ

渡名喜島の東側の海岸は「東り浜」(あがりはま)という。この写真も「風景メイクアップ」の「鮮やか風景」を「+1」で撮影したもの。空と海の色が少々キツすぎる感じがしないでもない。同機能はシーンを考えて適用したいところだろう

島には「ハブに注意」の看板がやたらと立っている。それほどまでにハブが多いのだろうか。島の人に聞いてみたら、やっぱり多いのだそうだ。昼間はともかく、夕方や夜の茂み近くはややキケンかも

渡名喜島から那覇へ戻るフェリーの上から海を見ると、フェリーが巻き上げるしぶきに西陽が射し込んできれいな虹ができていた。こういった虹は意外と撮るのが難しい

那覇市内にある国際サンゴ加工所の壁には巨大なサンゴが立体的に描かれている。駐車場には植え込みでつくったシーサーもあるが、このシーサー、なんだかユーモラスだ

同じく那覇市内にて見かけたナゾの「コマネチ練習中」。実は「コマネチ」というのはちょっとレトロな雰囲気をウリにする居酒屋なのである。「練習中」は「準備中」?

国際通り沿いで泡盛を売っている店の店頭にはよくこのようなハブ入りハブ酒が置かれている。ハブエキスだけのハブ酒は安いけれど、ハブ本体が入っているとべらぼうに高い

そして次なる旅へ

……沖縄から帰って1週間後。僕はまた旅に出た。今度は前回より短く、2泊3日の行程。行く先は新潟と佐渡。

東京から新潟に向かう新幹線の中で、東京の名物駅弁「深川めし」を食す。アサリの炊き込みご飯にアナゴとハゼ、海苔。このシンプルな顔合わせが実にうまい。僕がいちばん好きな駅弁です

佐渡の観光名所・佐渡金山で食べた金箔入りのソフトクリーム。金箔はべつに味はしないと思うんだが、やはりみなさん興味を惹かれるらしい。多くの人がペロペロやっていた

駆け足で書いていこう。8月1日、朝の新幹線で新潟駅へ。そこからまずは新潟競馬場に向かう。夕方、市街地に戻り、地酒と地魚で一献。駅近くのホテルに泊まって、2日早朝、7時発のジェットフォイルで佐渡に渡った。

佐渡金山の「道遊の割戸」辺りを散歩していたら、道を1.5mにも及ぶアオダイショウが横切った。慌ててカメラを起動し、パシャり。胴体の半分から後ろしか写らなかった……。カラダがちょっと膨らんでいたのでカエルでも飲み込んだか?

佐渡は(本州・北海道・九州・四国と北方領土の択捉島・国後島を除けば)沖縄本島に次いで日本で2番目に大きな島。その中央に位置する国仲平野では、とても島とは思えない広大な風景を見ることができる

佐渡は初めてという友人5人を連れた旅だったので、佐渡金山をはじめとする観光名所を周遊。3日も引き続き佐渡各地を巡って、夕方のフェリーで新潟へ帰港し、へぎそばと地酒で数時間すごしてから、夜の新幹線で東京に戻ってきた。

奄美大島・沖縄と、新潟・佐渡。計9日間の旅を終えて、800枚を超える写真を撮影した。しかしながらいま「EX-H10」の電源を入れて、背面モニターのバッテリー表示を見ると、驚くことにまだフルのまま。たしかに1,000枚撮れるというのだから800枚ではびくともしないのかもしれないが、それにしてもこのスタミナぶりには、やっぱりびっくりせざるをえない。1週間程度の旅行なら、これは本当に充電器携行不要の「旅カメラ」と言っていいだろう。

最近、戦隊ものキャラクターをつくる離島が多いように思う。鹿児島県・種子島の「タネガシマン」も力が抜けたが、こちらは「サドガシマン」。シマナガシブルー、ズルガシマンなど命名もかなり脱力系

佐渡の観光名所のひとつ・尖閣湾で透視船(グラスボート)に乗ろうと思ったら、「最大"塔"載人員15名」と書いてあった。同じ場所に係留されていた4隻のグラスボートのうち、正しい字になっていたのが2隻で、"塔"が2隻。……なぜだろう

佐渡南部の赤泊港ではちょうど「みなとまつり」が開催されていた。夜は花火大会。宿の3階バルコニーから「ベストショット」モードの「花火」で撮影を試みたけれど、三脚がなかったので手持ちでは少々つらいか。でもそのブレが不思議な効果を生み出しているのがおもしろい

赤泊港の港近くに建つ「長寿の石」。あのきんさんとぎんさんの手形が彫り込まれている。その後ろには、船を改める役所だった御番所の様子が再現されている

南西部の小木港で、名物・たらい船に挑戦。おそるおそる乗り込む、筆者の友人たち。港入り口には、これは何に使うのだろう、よくわからんプラカードが多数置いてあった

小木港から車で10分ほどのところにある宿根木は、江戸時代に廻船業で栄えた集落。いまでも町並み保存地区として往時の姿を偲ばせてくれる。写真は三角形の建物で、妙になつかしい(?)「塩」の看板が下げられていた

同じく宿根木の集落で、町中を流れる称光寺川で冷やされるスイカ。日本の夏の光景ですな。この川は宿根木の人々の暮らしを支え続け、時に氾濫して困らせもしたという

宿根木で奇妙な張り紙を発見。たらい舟が青森に流れ着いたとかで、その持ち主を探しているようだ。たらい舟はいまでもこの地区で貝などの漁に利用されている。実際に漁をしているところを見かけることも多い。なお、張り紙のお顔や住所にはモザイクをかけてあります

佐渡といえばトキ。佐渡市が運営する「トキ資料展示館」では、観察通路からトキの姿を眺められる。やや距離があるとはいえ、ニッポニア・ニッポンことトキの生の姿に触れられるチャンス。物音や大きな動きでトキを驚かさないよう、静かに観察すべし

佐渡をドライブしていると、「トキ」の文字を使った看板を数多く見かける。中にはこういう、よくわからないものも。同じ場所には「トキもピカチュウも畳が大好きです」という看板もある

佐渡の旅を終え、帰りはフェリーで新潟へ。無数のカモメが飛び回り、客がエサを差し出すと、口先でうまい具合に奪取していく。子どもだけでなくオトナたちもこのエサやりに興じていた

帰りの新幹線から、全国的に有名な長岡花火大会の花火を拝むことができた。「EX-H10」を取り出し、窓に向けてシャッターを切ったら、車内の様子が写り込んでまた不思議な写真が出来上がった