いざ、ダイナミックフォトにチャレンジ!
前置きが長くなったが、今回はカシオのコンパクトデジタルカメラ「EXILIM Hi-ZOOM EX-H10」を使ってダイナミックフォトにチャレンジしてみたわけだが、ここでダイナミックフォトの仕組みについて簡単に説明しておきたい。基本は静止画が背景としてあり、連続写真から被写体を切り抜いた"動画"を合成する。つまり、背景とキャラクターの組み合わせ方次第で、ユニークな映像を作り出すことができるというわけだ。
切り抜きの方法としては、まず動画の撮影をする。人物であればその場で動いて貰えばいい。そして動画を写したら、今度は画面内から人物に消えて貰い、同じアングルでもう一枚撮影する。そうすると、カメラが動いている部分と静止している部分の違いを認識して、自動的に切り抜き映像を作ってくれるというわけだ。
こういう物を持つとすぐに試してみたくなる性質なので、娘とその友達(小学4年生)を連れ、小学校の校庭に撮影に出かけてみた。校庭にある遊具などを使って切り抜き動画を撮ろうと思ったのだ。まず、はじめに試してみたのが高鉄棒。鉄棒にぶら下がってブラブラしている下半身を撮影。何者かに上半身をくわえられているイメージを作ってみたい。 しかしいざ撮影してみると、いまいち切り抜きがうまくいかなかった。なんだか足が細くなってしまうのだ。気を取り直して、今度は登り棒に移動。クモの糸にのぼったり、ストローにのぼったりしている所を合成してつくることができる。しかし、今度も問題が起きる。人物本体はうまく切り抜けているのだが、登り棒で分断されている手の部分が消えてなくなってしまうのだ。
結局、校庭での撮影はいまいちだった。あまり深く考えずに外に飛び出してしまったが、切り抜きをうまくやるためには、それなりのコツが必要なようだ。少し気合いを入れて切り抜きにチャレンジしてみる。
今度はきちんと切り抜いてみる
家に帰ってダイナミックフォトのヘルプなどを見ていたら、切り抜きのコツなどが、きちんと書いてあった。しかし、こういうものはあまり用意周到にやっても面白くない。とりあえず自分でやってみて、失敗してみることが重要だ。と、言い訳をしておこう。
校庭での撮影がいまいちだった理由を考えてみると、バックと人物との境がはっきりしていなかったということが挙げられるだろう。グラウンドや校舎などの背景と人物の肌が、明るさや色的にあまり差がなかったということだ。子ども達は半袖半ズボンだったけど、これが濃い色の長袖長ズボンであれば、問題なく切り抜けていたと思う。
それから登り棒で手が消えてしまったのは、手が動かない棒で分断されていたために、同じ動画の一部とは認識されなかったということだな。このあたりも注意点だ。要するにバックがうるさくなくて、切り抜くためのキャラクターと明るさや色でなるべく差がつくように、あらかじめ考えて撮影を行うことが重要だということだ。
そんなことを踏まえて、今度は人形を使って切り抜きをしてみた。今度は無地の紙を背景として使う事にする。人形の肌色の補色は緑色。この肌色の中には緑色成分は含まれていないので、一番差のつく色と言える。ということで、緑色の紙をバックに垂らすことにした。そして人形は透明アクリルの細い棒にくっつけ上から吊るす。つまり人形が宙に浮いているような状態だ。
ポイントは人形の影が画面に入らないようにすること。この影が問題でまた悪さをする。つまり影の部分もキャラクターの一部と判断されてしまい、うまく切り抜くことができなくなってしまうのだ。実際にはライトを上の方から当てて、下の方にできた影は、フレームの外に逃がしてしまうという方法をとってみた。
空中浮揚が好き!
吊るしてある人形を小さく揺らし、さらに手で持っているカメラをゆっくり動かすことによって、動画の撮影を行った。そしてその次に人形なしの緑バックのみの撮影を行う。しばらく待つと動画の切り抜きができあがる。今度はうまくできた!
作例はレトロなキューピー人形が、ビー玉レンズの宇宙を漂っているところ。これはデヴィッド・リンチ監督の『砂の惑星』の中で、巨漢が宙を漂っているシーンから着想を得た。って、そんなたいそうなもんでもないけど(笑)。
もう一つ人形を使ってムービーを作ってみた。今度はカミさんが彩色したマトリョミンが被写体。マトリョミンというのは、最古の電子楽器テルミンが内蔵された、マトリョーシカ型の楽器のことだ。手を近づけたり、遠ざけたりすることによって、音程を変えることができる。
これを吊るして、落っことしたりしたら大変なことになる。そこでテレビの回転台の上に載せてグルグルと回転させてみることにする。今度は形が単純だから、すごく簡単に切り抜くことができた。カミさんに見せてみると「回転だけじゃ面白くないから、上下に動かせないの?」と言われてしまった。ウーム……。
助手を使い、テレビ台を使ってマトリョミンを回転させる。カメラを上下させる際には、人形がフレームアウトしないよう注意 |
タンポポの綿毛を黄色い紙バックで撮影して万華鏡化したもの。これは鏡は使わずにPhotoshopでパターン化してみた |
ゴムで吊るして回転させながら、上下動も加えればできるかもしれないけど、落っことした時のことを考えると恐ろしい。そこでテレビ台の上で回転させながら、カメラの方を上下に動かしてみることにする。今度は助手(カミさん)に回転を任せ、私はカメラの上下動オペレーティングに専念することにした。
今度も切り抜きはうまくできた。そしてバックにはタンポポの綿毛を万華鏡化した写真を合わせてみた。これは、マトリョミンのふわふわとした音色を表現したものだ。って、そんなたいそうなもんでもないけど(笑)
ようするにこのダイナミックフォトの肝は、いかにきれいに切り抜けるか、というところにあるようだ。バックのことを何も考えずに撮影すれば、当然うまくいかないこともありうる。まず動画を撮影する前に、バックと切り抜きたいキャラクターとの対比に注目してみるというところがポイントとなる。
もし、どうしても切り抜けない場合には、すでに切り抜きになった数多くの動くキャラクター素材がカシオのホームページ上からダウンロード可能なので、自分の撮影した背景写真と合成することもできる。どういうシチュエーションで背景と組み合わせたら面白いものができそうか、考えてみればいいということだ。
ダイナミックフォトの楽しみ方
このダイナミックフォトの面白さは、Photoshopなどの画像処理アプリケーションを使わずに、動画の合成ができる点にある。ちょっとオモチャっぽいギミックとも言えるけど、単純な分、子ども達もアイディアを出しながら楽しんでいた。カメラの操作自体はそんなに難しくないので、慣れれば子どもでも扱うことは可能。ただし、切り抜きにはコツがあるので、もし子どもが使う場合には、バックに使えるような紙や布を用意しておいてあげたほうがいいだろう。
あとは、動画だけでなく静止画同士の合成にも対応しているので、単純に「合成写真ができるカメラ」として楽しむことも可能。個人ユースであれば、アイドルの写真とのツーショットを合成するなど、いろんな楽しみ方はできるはず。
私個人としては、人間の全身切り抜きがいまいちだったので、ちょっとリベンジしてみたいと思っている。