米NVIDIAは8月4日 (現地時間)、Siggraph 2009において、レイトレーシング・エンジン「OptiX」を発表した。ソフトウエア開発者向けアプリケーション・アクセラレーション・エンジン群の1つで、同スイーツには他に「SceniX」「CompleX」「PhysX 64-bit」などのエンジンが含まれる。

レイトレーシングは、3Dグラフィックスにおいて、映像面の全てのピクセルを通過して視点にとどく光線をトレースするレンダリング手法だ。視点や光源の位置に基づき、オブジェクトの表面の反射や屈折、陰影、透明度などを細かく反映させた高品質な描画を実現する。ただしピクセルごとに光線経路をたどるため計算量が膨大になり、処理に時間がかかるのがデメリットだった。

OptiXエンジンはC言語を用いてプログラミングできるレイトレーシング・パイプラインだ。NVIDIAは「世界初のインタラクティブ・レイトレーシング・エンジン」としている。CUDA GPUコンピューティング・アーキテクチャを用いたプロフェッショナル向けのQuadro FXソリューションを通じて、「これまでソフトウエアで数分を要していた作業が、OptiXエンジンで数ミリセカンドに短縮される」とNVIDIA。フォトリアルなレンダリング、自動車スタイリング、音響デザイン、光学シミュレーション、体積計算、放射線リサーチなどにおけるレイトレーシング利用を大幅に加速させる技術になるという。

OptiXによるハイブリッド・レイトレーシングのイメージ

今回のOptiX発表に対してJon Peddie Research設立者のJon Peddie氏は、「NVIDIAはGPUによるインタラクティブ・レイトレーシングの可能性を示してから、わずか1年でその技術を全ての開発者に届けようとしている」と評価している。

SceniXは3Dデータとシーンを管理するマネージメント・エンジンだ。プロ向けのリアルタイム3Dアプリケーションで求められるインタラクティブ性を実現するコアになる。CompleXエンジンは、大規模で複雑なモデルの処理において、アプリケーションのインタラクティブ性を維持しながら複数のGPUにまたがって性能をスケーリングする。また物理演算エンジンPhysXの64-bit版は、大規模なデータセットにおいてより高精度な計算を可能にするという。

Realtime technologiesとAutodesukによるリアルタイム・レンダリング・イメージ

NVIDIAアプリケーション・アクセラレーション・エンジンはNVIDIA Developer Zoneから入手する。現時点でダウンロード提供されているのはSceniXとCompleX。OptiXとPhysX 64-bitは2009年秋に提供開始となっている。