完成度の高い人事管理データベース「法人従業員データ管理」
現在開催されている「ファイルメーカー選手権」のWebには、過去の受賞作などが[応募された作品一覧]として多数収録されている。これを見ると、「自分にも作れるかも」「FileMakerを使うと、こんなことができるのか」と関心を持たれた方も多いのではないだろうか。
「ファイルメーカー」は、簡単にデータベースを構築することができるソフトである。データベースと言われると一見構えてしまいがちだけど、意外にも身の回りに活用例は多いはずだ。「こういったものがあれば便利なのに」といった思いつきからイマジネーションを働かせて、是非今回の「ファイルメーカー選手権」に挑戦してみて欲しい。
本稿では、前回の「伴子の楽々栄養計算」に引き続き、FileMaker傑作テンプレートを紹介していく。第2回となる今回は、ビジネスシーンで大いに役立つと思われる、中小企業での利用を想定した従業員データの管理データベース「法人従業員データ管理」(作者: 斉藤 誠さん)を取り上げてみよう。
豊富な機能と「利用者目線」で創られた傑作テンプレート!
前回大会で月間MVPに輝いた「法人従業員データ管理」は、なんと「試用版でどこまでできるか試してみた」という意欲作。試用版の有効期限は30日間と限られているにも関わらず、非常に内容の濃いアプリケーションとして多彩な機能が盛り込まれている点が高評価に繋がったという逸話付き。
どのような作り込みがなされているのか気になるところだ。では、早速テンプレートをダウンロードして、その使い勝手をチェックしていこう。この「法人従業員データ管理」は、従業員の情報を一元管理することが可能なほか、複数の事業所にまたがる業務も処理することができるという。
メニュー画面にある[仕事を始める 基本情報管理へ]というボタンをクリックして、登録されているサンプルデータを確認すると「基本情報管理画面」に従業員の氏名や性別、生年月日や血液型といった情報はもちろん、[所属][給与関連][必要書類保管庫][取得資格]等の多種多様な情報を参照することができるのがわかる。
しかも、総務や人事といった業務にかかわる雇用契約書や稟議書の作成も簡単に行うことができるようボタンが用意されているのだ。単なる情報閲覧データベースに止まらず、実務面での業務効率化が図られているのがすばらしい。極めて実用的な総合総務人事管理システムと呼べるほどのクオリティを誇っている。
基本情報管理画面から個人情報を呼び出し、雇用契約書を作成することも。自動でデータが挿入されている部分がオレンジ、文書作成者が記入しなければならない部分をグリーンで表すなど細かな配慮にも注目してもらいたい |
ここまでのデータベースシステムを、たった30日という限られた試用期間で作成されたというのだから恐れ入る。実際に業務にあたる人材が使いやすいように、必要な情報と必要な機能がきちんと備わっている。パッケージソフトウェアとして販売されていてもおかしくないクオリティだ。
また、本テンプレートが優秀なのは機能だけにあらず。操作マニュアルの作り込みとわかりやすい利用方法の示し方がなされていることにも注目したい。本テンプレートの設計思想やシステムを構築するデータベースの全体を俯瞰して見ることができる構成図、新規入職者、退職者が発生したときの登録操作方法などが、使う者の目線に立って丁寧に説明されている。
しかも、[全体図]ではマニュアルが存在する機能にカーソルを合わせることでダイレクトに参照することができるなど工夫されており、「マニュアルのお手本」としても勉強になる作りになっている。
一連の作業を通じて「どのように作業すればよいか」が明確に示されているマニュアルだというのがお判りだろう。こういった「利用者目線」のマニュアルの存在は利便性を向上させるのはもちろん、どんなスキルの人間でもマニュアルさえ一度目を通せば簡単に作業できる、という業務の簡素化に繋がるところを評価したい。
是非、この傑作テンプレートをお手本に!
すべてがシステマティックに設計された「法人従業員データ管理」。ここまでの作り込みを行うためには、ファイルメーカーに関する知識もさることながら、「総務や人事として業務にあたる際に必要な機能は何か?」「作業を効率化させるためにはどうすればよいのか?」といった実務者視点での情報の整理と、実際にシステムとして構築していくうえで肝心要となる設計図作りを行わなければならないだろう。
だが、そこさえクリアしてしまえばわずか30日といった限られた期間でも、ここまでのデータベースシステムを構築することだって夢ではないのだ。
真に利便性の向上するビジネスハックツールとしてファイルメーカーをフル活用したい。そういった向きの方々には、今回ピックアップした「法人従業員データ管理」はよいお手本と言えるだろう。「我こそは!」とファイルメーカー選手権にチャレンジしようと考えている人は、是非一度本テンプレートをダウンロードしてサンプルを実際に触ってみて欲しい。
そして、利用者目線でこのシステムを隅々までチェックしながら、テンプレート制作時に押さえておきたいポイントやデータベースのリレーション方法を参考にしながら、自分が想い描くテンプレートを具現化していってもらいたい。
そこで他の追随を許さないほどのテンプレート完成度と導入メリットを強く打ち出すことができたなら、第10回マイコミジャーナル ファイルメーカー選手権での上位入賞も夢物語ではなくなるだろう。「私の美しくシステマティックなDBシステムを見てちょうだい!」と腕に自信のある方々からの応募を期待したい。