ウィルコムの喜久川政樹社長 |
22日から24日まで東京ビッグサイトで開催されたワイヤレス関連の総合展示会「ワイヤレスジャパン 2009」。開催初日に行われた基調講演で、ウィルコム 代表取締役社長の喜久川政樹氏が「ウィルコムが目指す、もうひとつの未来」と題した講演を行った。
喜久川氏は講演の冒頭で、今年4月からビジネスパートナー向けを中心にエリア限定サービスが開始された「WILLCOM CORE XGP」のユーザーからの評価を紹介。「われわれの想定どおり、10Mbpsを超えるスピードが出ているとの評価を頂いている。上り速度についてもウィルコムが言っていた通りのスペックが出ている」とし、WiMAXやHSDPAと比べても「結構早い」とアピールした。
続いて喜久川氏はこのXGPの通信速度を実現するためのキーワードとして、「TDD」「スマートアンテナ」「256QMA」を挙げ、それぞれの特徴を説明。
まずTDDの特徴として、国際展開への優位性と世界最大のマーケットである中国との強調がとりやすい点を挙げた。スマートアンテナについては、電波状況に合わせてフレキシブルに出力パターンを変更できる点が特徴で、送受信の周波数帯が同じTDD方式で利用することで、スマートアンテナが本来の提供環境で利用できるため「TDDとの親和性が高い」と説明。デジタル偏重方式の1つである256QAMについては、「1信号あたりに乗せられるビット数が多い。安定かつ良好な無線環境が必要で、これまでの移動体通信では実用困難であったが、XGPで実現し実際に実力を発揮している」と解説した。
喜久川氏は、XGPと同じTDD方式を用いるWiMAXはと比較しても、256QAMを採用したことで、上下同じ時間を割り振っても下りの速度を維持できると続け、これら3つの特徴を持ったXGPの強みを「十分な下りのスピードを確保した上で、上りのスピードも速い」と説明。また、XGPならではのアプリケーションとして、固定ブロードバンドとしての利用や固定カメラアプリ、業務用の映像伝送などに活用できると語った。
TDD方式はペアバンドが不要かつ、周波数割当が比較的簡単なため、グローバル展開が行いやすい。上下同じ周波数を利用するためスマートアンテナとの親和性が高い |
スマートアンテナの干渉回避効果によりモバイル環境で256QAMの採用が実現した |
続いてXGPエリアの構築の取り組みについて解説した。山の手線を中心に展開している、スマートアンテナ・マイクロセルを用いたXGPエリア構築の取り組みや、東京駅付近のXGP基地局の配置図を紹介。また、郊外部のエリア展開として、山形県新庄市で実施したマクロセルを利用した実証実験を紹介し、半径2キロ以上のエリアを構築できるとアピールした。「都心ではマイクロセル、郊外ではマクロセル」で(喜久川氏)でネットワークを構築する方針だ。
なお現在、XGPのパフォーマンス向上のため、屋内浸透を良くするためのチューニングやスループットの安定を実現するためスマートアンテナのチューニングなども行っているという。
また、既存のPHS活用した取り組みについても触れた。喜久川氏は、既存のPHSサービスを提供する上の優位点として「省電力性」「低電磁波」「災害に強い」「地方自治体との連携」「若年層マーケットの開拓」を挙げ、省電力性を活かしPCの電源がオフの状態でもHDD内のデータを消去可能としたモバイルPCセキュリティソリューションや、停電磁波を活かし医療機関での利用に対応した機器などを紹介。このほか、若年層マーケット開発への取り組みとして、今年1月に発表した、メール以外のパケット通信を定額にする「データ定額」を従来の月額1,050円~3,800円から、0円~2,800円の2段階に変更する「新ウィルコム定額プラン」を紹介した。
喜久川氏は講演の最後に、XGPサービスについて「良いものができたと思う」と振り返り、今後はXGPを活用するとともに、旧来のPHSの良さもうまくミックッスして国内・海外展開に注力すると語った。