「皆さんはこの部屋に閉じこめられました。もうここから普通の方法で出ることはできません。脱出するには、部屋に隠された謎を解かなければなりません」映画やテレビゲームのプロローグで語られるようなセリフが、部屋の主人から来客に向かって告げられた。しかしここはスクリーンの向こう側の世界ではなく、廃校となった中学校の校舎の中。20名ほどの男女が集まった教室の扉は、冒頭の主人の言葉と共に固く閉ざされた。
がらんとした教室の一角には警備員に守られた箱があり、床や壁面には不可思議な文字・絵などが書かれている。そのほか、カプセルおもちゃの販売機、カギのかかった道具箱、積み木といった雑多なものが置かれている。客人たちは手がかりのないこの状況から謎を解き、無事教室を「脱出」することができるのか……。
Flashゲームの世界を現実に体験
これは、6月に都内・世田谷区のIID 世田谷ものづくり学校で開催されたイベント「リアル脱出ゲーム 廃校脱出シリーズ2・図工室からの脱出」の一場面だ。
「脱出ゲーム」とはコンピューターゲームの一種で、一室の部屋に閉じこめられたプレイヤーが、謎を解いたりアイテムを見つけたりして部屋から脱出するというもの。多くの作品はインターネット上でFlashコンテンツとして公開されており、Webブラウザの画面上でマウスをクリックするだけでプレイできるので、誰でも気軽に楽しむことができる。
その脱出ゲームを、画面の中だけでは飽きたらず、現実の体験型イベントにしてしまったのが、今回の「リアル脱出ゲーム」だ。京都でフリーペーパー「SCRAP」を発行している加藤隆生さんが考案し、昨年から関西を中心に開催している。関東での開催は今年2月に続いて2回目だが、500枚のチケットが前売りでほぼ売り切れとなる人気イベントだ。