Wi-Fi Allianceは、9月に行われるInstitute of Electrical and Electronics Engineers, Inc(IEEE)のIEEE802.11n標準最終決定にあわせて、いくつかのオプション機能を追加すると発表した。これまでに認定されている「Wi-Fi CERTIFIED 801.11n draft2.0」製品との相互接続性を維持しながら、新たに追加されるオプション機能のテストが加わる。
発表会ではまず、Wi-Fi AllianceのMarketing DirectorであるKelly Davis-Felner氏が801.11n標準の最終決定について説明した。
Wi-Fi AllianceのKelly Davis-Felner氏。802.11n標準化の最終決定で追加されたオプションテストを説明 |
携帯端末、コンシューマエレクトロニクスへの搭載がWi-Fiの成長の原動力となっている |
市場環境をモニタリングしたところ、802.11n標準の一部オプション機能がより広く利用される傾向にあるため、小規模のオプションテストを追加することにしたという。テストに追加を予定している機能は、データ伝送の効率が向上する「パケット アグリゲーション(A-MPDU)」、一定の環境においてパフォーマンスを高めるためのマルチアンテナ伝送手法「Space-time Block Coding(STBC)」、40MHzチャネル オペレーション下で「近隣と干渉しない」環境を確保するためのチャネル共存策など。すべての追加機能はオプションだが、導入後はテストを実施。どの追加テストも互換性には影響しないとしている。
Wi-Fiの現状については、世界中で10人に1人が活用し、2009年度末までにチップセット累計20億におよぶ出荷実績を持つ。Wi-Fi機器は2008年に約4億に達し、2011年には約10億台の出荷を見込んでいる。最近では携帯端末、ネットブック、MID、コンシューマエレクトロニクスの伸びが著しい。このなかでもWi-Fi対応携帯端末は、インストールベースで2009年に約1億200万台。現在までに375の電話機が認定済みで、2009年の認定数は2008年度比200%の見込み。大きな成長分野となっていることを説明した。
新しいWi-Fiの利用方法として、Wi-Fi device-to-deviceを提供予定。Wi-Fiネットワークやインターネットに接続することなく、どこでもWi-Fiデバイス間を接続できる。PCや携帯電話だけでなく、デジタルカメラや携帯ゲーム機などでも利用可能。たとえば、デジタルカメラから直接プリンタに接続して写真を印刷したり、友達と音楽を直接共有したり、携帯電話で写した写真をテレビに直接表示させたり、異なるデバイス間で友達とゲームしたりなので、2010年には提供する予定だ。
マルチメディアでの802.11nの有用性
続いて、Broadcom CorporationのTechnical DirectorであるDr. Stephen Palm氏が、マルチメディアでの802.11nの有用性を説明した。
従来の規格が成熟しつつある一方で、802.11nが飛躍的に拡がり始めている。その背景にあるものがコンシューマエレクトロニクスでの動画アプリケーション。Webサイト閲覧や電子メールの利用では、遅延や狭帯域でもあまり問題がなかった。それがファイルのダウンロードやアップロードなどでは広帯域への要求が発生し、オンラインゲームやVoIPなどでは遅延が許容できなくなった。さらに、動画ストリーミングでは、広帯域で遅延が許されない状況になってきている。つまりサービスごとに帯域幅の用件と遅延に対する許容度が異なるのだ。それに対して有効なのが802.11nとなる。
マルチストリームとシングルストリーム、シングルバンドとデュアルバンド、同時デュアルバンドとパフォーマンスレベルが異なる複数の層を持ち、複数のオプション機能なども用意。ハイパフォーマンスラジオアーキテクチャやアグリゲーション、ML MIMOイコライザなどにより、あらゆる距離で高いスループットを実現し、Wi-Fiが接続できない"コールドスポット"をなくす「Space-Time Block Coding」(STBC)などにより堅牢な接続を確保している。たとえば、同時デュアルバンドの2ストリームだと、音声/データを2.4GHz、動画を5GHzと同時にサポートできるなど、さまざまなサービスが実現できるようになるとした。