寸劇ビデオで営業の心をガッチリキャッチ
All-Accessは同社の営業担当者にとってのメリットも大きい。
以前は、各営業担当者が、担当外の製品に関する説明を強いられるケースもあったうえ、予算に限りのある顧客には、いくつかの候補の中から選択を迫るという行為も必要だった。それが、現在はAll-Accessを紹介すれば、すべての問題が解決することになる。顧客が受け入れやすい状況ができたうえ、パンフレットを何種類も持参する必要もなくなる。「社内で初めて発表したときから、ほとんどの営業担当者に喜んでもらえた」(Rathle氏)という。
「今年の1月にグローバルの営業会議を開き、All-Accessの効果を紹介するビデオを見せた。当時の商談の様子とAll-Accessリリース後の様子を面白おかしくまとめた寸劇になっていたのだが、これが大いに盛り上がった」(Rathle氏)
喝采を浴びたそのビデオがこちらだ(YouTubeより)。
当時の状況を表したシーンでは、Delphi(CodeGear)担当者とDatabaseGear担当者が顧客を訪れる。しかし、ユーザー企業の担当者はDelphiを知らず、iPhoneアプリと勘違いする。そのうえ、要件を聞いて該当するのはDatabaseGearのプロダクトばかり。いくつも製品を紹介するが、Delphi担当者の出番がなく、最後にはDatabaseGearのパンフレットを顧客の手元にまとめて放り投げてしまう。
挙句の果てに、顧客からは「予算が足りない」と言われる始末。営業活動は不毛な結果に終わりそうな気配を見せる。それが、All-Accessリリース後は、All-Accessを紹介するだけで話がまとまる。担当の壁も取り払われ、おだやかに商談が進んでいる。
Rathle氏は、そのような背景から誕生したAll-Accessについて、実際に提供開始した後も、営業担当者/顧客ともに「好意的に受け止めてもらえている」と言い、「もともとDatabaseGearとCodeGearは補完しあえる位置づけにあった製品。買収前からAll-Accessの案はあり、開発者の強力な武器になると信じていた」(Rathle氏)と、買収効果がねらいどおりに現れていることを強調した。
いざというときの助けになるツールセット
さて、All-Accessが包含する18という製品数について、プロジェクト管理者によっては「そんなにいらない」と考える方もいるかもしれない。そうした疑問に対して、Rathle氏は車の修理用工具を例にとりながら、メリットの一端を説明する。
「ホームセンターで売っている車修理用工具セットの中には、ものすごい数の工具が入っているものがある。購入者は、それらの工具を全部使うかというと、決してそうではない。仮に200個の工具が入っていたとしたら、きっと普段使うのは10個くらい。残りの190個の中には一度も触れることがないのもたくさんあるはずだ。ただし、そういうツールも、いつか使う日が来るかもしれない。いざというときに手元になければ、買いに行く手間がまたかかることになるし、走行に影響するような故障であれば、車で買いに行くこともできなくなる。普段使わない190個はそういうときの備えとして有効だ。All-Accessもすべてを日常的に使うユーザーは少ないかもしれないが、手元に置いておいたほうが便利なツールがたくさん入っている」
具体的に見てみよう。All-Accessに含まれる常時使用するツールとしては、統合開発環境、運用管理ツールなどが挙げられる。これらに加えて、プロジェクトの特定の工程でしか使用しないようなツールとして、設計ツールやパフォーマンスチューニングツールなどが存在する。こうしたツールは、最低限の目的を果たすという観点で考えれば、既存のツールやフリーソフトなどである程度代替することが可能かもしれない。ただし、その分、手間が掛かったり、管理が難しくなったりする。常用プロダクトにこうした付加価値の高いプロダクトが付いてくると考えると、開発者にとって有り難いプログラムと言えるだろう。
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Rathle氏は、最後にエンジニアへのメッセージとして、「Embarcaderoは、システム開発に携わるエンジニアをサポートするための会社。提供しているのは、いずれも有用な製品ばかりであり、単体での購入ももちろん歓迎する」とコメント。「All-Accessは、あくまでそれらを割安に購入できるプログラムなので、必要に応じて検討してほしい」と続けた。
なお、All-AccessはEmbarcaderoのWebサイトで1カ月限定のトライアル版が提供されている。Rathle氏は「積極的に活用してほしい」と薦めたうえで、「今後の開発方針を決める際には、利用者のフィードバッグが最優先されるので、ぜひ試してご意見を送ってほしい」と締めくくった。