米Embarcadero Technologies All-Access製品管理ディレクター Philip Rathle氏

米Boland SoftwareのCodeGear事業部(以下、CodeGear)が米Embarcadero Technologies(以下、Embarcadero)に買収されてからはや1年。企業統合後もそれぞれの製品群を「CodeGear」、「DatabaseGear」という異なるブランドとして開発/販売活動を進めてきた同社だが、今年3月にはブランドの垣根を越えてすべての製品を利用できるプログラム(ライセンス形態)「Embarcadero All-Access」(以下、All-Access)を発表。企業統合のプロセスは、単なる合併から、相乗効果を生み出す段階へと移りはじめている。

本誌は、All-Accessの製品管理ディレクターを務める、米Embarcadero TechnologiesのPhilip Rathle氏に、統合の状況やEmbarcadero All-Access誕生背景について話を聞いたので、その模様をお伝えしよう。

企業文化の違いに苦労も

同じツールベンダーとして、開発者に向けた製品を提供し続けてきたCodeGearとEmbarcadero。しかし、企業統合に際しては、一般的な企業買収案件と同様、社風や企業文化の違いに戸惑うケースが多かったという。

当時の様子について、Rathle氏は「仕事の仕方や話し方まで違った」と振り返る。そのうえで、両社の溝を一気に埋める契機となったのがAll-Accessだと説明した。

「新しい製品をリリースするとなると、1つのゴールに向かってさまざまな担当者が共同で作業をすることになる。"エンドユーザーがどのように使うか"、"他の製品とどのように連携させるか"、など、営業からマーケティング、開発担当者まで、多くの人が多くの想像を働かせ、それを議論しながらまとめあげていく。そうした作業を行っていると、自然と連帯感が強まるし、社員全員が希望を持つようになる。All-Accessをリリースするまでの中で、1つの会社になっていくことを強く実感できた」(Rathle氏)

All-Accessは、先にも触れたとおり、DatabaseGear、CodeGearというブランドの垣根を越えて、Embarcaderoのすべての製品を自由に利用できる新たなプログラムだ。利用できる製品は最大で18製品にも及ぶ。にもかかわらず、ライセンス料金は2、3製品分という非常にリーズナブルな設定になっている。

また、プロジェクトによって異なる利用形態にも配慮し、「Bronze」、「Silver」、「Gold」、「Platinum」の4つのアクセスレベルに、「ワークステーションライセンス」、「ネットワーク指名ユーザーライセンス」、「ネットワークコンカレントライセンス」の3つのライセンス形態が用意されている。開発者からアーキテクト、設計者、DB管理者まで、プロジェクトメンバーの立場や状況に応じて最適なものを選べる仕組みだ。

合併により顧客の要望に応えられるツールが多数

では、そもそも、このようなプログラムを作るきっかけとなったのは何なのか。この問いに対し、Rathle氏は「All-Accessは顧客と弊社営業担当の要望により生まれたもの」と返した。

CodeGearの買収により、Embarcaderoの製品ポートフォリオは大幅に拡大した。エンジニアのいろいろな悩みに対応できるようになった結果、顧客のもとへ御用伺いに行くと、「それこそ30分も話せば、先方のニーズに応えられるツールを5つぐらい紹介できる状況になった」(Rathle氏)という。

ただし、顧客側から見ると、Embarcaderoがどのようなツールを提供しているのかを把握するのが難しい。そのうえ、いくつも購入するとなると金銭面の負担もそれなりになる。そのため、「せっかくニーズに合ったツールがあるのに、うまく活用されていなかった」(Rathle氏)という状況に陥った。

こうした問題を改善すべく誕生したのがAll-Accessだ。同プログラムであれば、Embarcaderoの製品を自由に使えるため、作業者は問題が生じた際にそれに合ったツールを選んで試すことができる。必要なものを使いたいときに使えるため、製品導入時にかかる時間のロスも少ない。しかも、価格も2、3製品分なので、常時使用するツールが少なくても、割高になることはない。

そのような長所を持つ同プログラムは、「Embarcadero製品の長所を知ることができるプログラムとして好評を博している」(Rathle氏)という。