KDDI代表取締役社長兼会長の小野寺正氏

ワイヤレス&モバイルビジネスのイベント『ワイヤレスジャパン 2009』が22日~24日の3日間の日程で開幕した。基調講演では、NTTドコモ代表取締役社長の山田隆持氏に続き、KDDI代表取締役社長兼会長の小野寺正氏が「KDDIの描くICTの役割」と題し、同社の未来像を展開した。

小野寺氏はまず、「移動体通信の状況」について説明。携帯電話をはじめとしたモバイルビジネスについて、「私はまだまだ伸びると思っている。この分野を伸ばすことが日本経済を牽引することにもつながる」と述べ、通信キャリアとしての期待と自負を表明した。 一方、「通信キャリアは端末の売上だけでなく、通信料も減少している」と説明し、金融危機後の厳しい状況に関しても指摘。また、800MHz帯における移動業務用周波数の再編成に関する投資が必要であると述べた。

小野寺氏は「通信キャリアは端末の売上だけでなく、トラフィックそのものも減少している」と説明した

LTEの導入については、「定額制によりユーザーのトラフィックが増えているため、ビット当たりの単価を落とす必要があるが、LTEを導入すれば単純に考えても5分の1になる」とし、「より多くの人が使える環境が整うことになる」と話した。

さらに、「KDDIに求められているICTの役割は、"押し付け"ではなく、意思決定・自己実現のサポートである」とし、携帯電話がライフスタイルを変えることで実現する社会を「アンビエント社会」と表現した。小野寺氏は、「これまでICTが果たしてきた役割は、外部とのコミュニケーションとバーチャルに偏って進化してきた」と指摘し、「今後は、リアルの世界にICTを拡張し、デジタル・ディバイドを解消しながら、ユーザーが自らとのコミュニケーションをするようになるべき」と来るべきICT社会の未来像を表現した。

小野寺氏は「KDDIに求められているICTの役割は、"押し付け"ではなく、意思決定・自己実現のサポートである」と述べた

その後小野寺氏は、KDDIの「新しいモバイル関連サービス」について、「biblio」「Sportio」などの2009年夏モデル携帯端末や、「au BOX」など家電(ホームネットワーク)連携の取組みなどを例に説明した。

また、Wi-Fi内蔵の携帯端末「Wi-Fi WIN」により、「これまで外で使うのがメーンだった端末が家の中でも使う人が多くなる」との見通しを示したほか、無線LANカードにより携帯端末を無線LAN対応にする取組みについても述べた。

無線LANカードにより携帯端末を無線LAN対応にする取組み

法人向けソリューションについても「モバイルによる新しいビジネスを展開する」とし、外出先でもオフィスでも携帯をそのまま内線として使える「携帯と内線の融合」のサービスや、「PCリモートデータ削除サービス」「スマートフォンリモートデータ削除サービス」などの「端末フリーのセキュリティ対策」を強化する方針を示した。

小野寺氏はさらに、SaaSソリューションについても、「いつでもどこでも業務ができる"モバイルSaaS"を実現する」と述べた。

「研究・技術開発の取組み」に関しては、携帯を向けた先の仮想空間が見える「実空間透視ケータイ」や、マルチメディアモバイル放送「MediaFLO」への取組みについて説明。MediaFLOについては、沖縄県のユビキタス特区で実証実験を行い、地域情報コンテンツの制作・流通も視野に入れていると述べた。

最後に小野寺氏は、新たな課題として「ICTと環境問題」があるとし、ICTの利活用による効果である「Green by ICT」と、ICT自身のエネルギー消費抑制効果である「Green of ICT」の双方をバランスよく進めていくべきであるなどと述べ、講演を終了した。