日産自動車は、ガソリンエンジンの燃費を向上させる燃料噴射システム「デュアルインジェクター」を開発したと発表した。同社によれば、量産乗用車用として世界初のシステムとのこと。小排気量エンジンに採用される予定で、搭載車両の市場への投入は2010年度初頭としている。

「デュアルインジェクター」

一般的にガソリンエンジンの燃料噴射システムは2本の吸気ポート(空気吸入口)を持ち、1気筒あたり1個のインジェクターが配置され、2つのポートに向けて燃料を噴射する。これに対し新システムでは各吸気ポートに1個ずつ、1気筒あたり2個のインジェクターを装備する。インジェクターから霧状に噴射される燃料の粒径が従来の約60%と小さくなったことで、燃焼を安定させる効果があるとのこと。また、連続可変バルブタイミングコントロール(CVTC)を吸気側だけではなく排気側にも搭載。同システムと組み合わせることで熱効率の向上や吸気抵抗(ポンピングロス)の低減を図り、同じ排気量のガソリンエンジンと比べて約4%燃費を向上させたという。

燃料噴射状態の比較。左はデュアルインジェクター1個によるポート1本への噴射、右は従来のインジェクター1個によるポート2本への噴射

さらに、噴射された燃料の気体化する速度が速くなり燃料の燃え残りが減少。排出ガス中の炭化水素(HC)の発生が抑制されるため触媒中の貴金属使用量は従来の1/2で済み、同社が2008年より採用する「超低貴金属触媒」を使用した場合は1/4まで低減できるとのこと。

同システムと同様の効果を持つ直噴システムが実用化されているが、高圧で燃料を噴射する必要があるため昇圧用ポンプを備える等構造が複雑で、コストや配置の観点から小排気量エンジン向きではなかったという。通常の圧力で燃料を噴射する今回のシステムはシンプルな構成で軽量。同じ排気量の直噴エンジンと比較すると、約60%製造コストを抑えることが可能としている。